脱原発依存が焦点、電源構成の論議始まる "新電源"としての省エネも重要に

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消費者の立場から「再エネ導入の野心的目標を」

一方、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント相談員協会常任顧問の辰巳菊子氏は、「原発依存度をいつまでにどれくらい低減させるかは見えないまま。福島事故の前後で原子力政策がどう変わったかはわからない」と指摘。基本計画策定などでも「国民の声を聞かずに進められてきたことに大きな疑問を感じる」と述べた。また、CO2削減に寄与する再エネの野心的な導入目標設定を求めた。

ちなみに、ドイツでは2020年の再エネ導入目標を全発電量の35%、50年に80%と設定。デンマークでは50年までに100%達成を目指している(再エネは水力発電を含む)。

また、全国消費者団体連絡会事務局長の河野康子氏は、「再エネの最大限導入や節電・省エネによるエネルギー需給構造の転換を目指すべき」とし、大規模集中型から地域分散型への供給体制シフトを提唱した。

ジャーナリストで環境カウンセラーの崎田裕子氏は、「再エネ拡大には大賛成」としながらも、「系統連係やバックアップ電源建設も合わせたトータルコストを出したうえで検討すべき」と話す。原子力は技術力確保や人材育成など、総合的観点からの検討が必要とした。

節電・省エネは「新しい電源」

一橋大学大学院教授の橘川武郎氏は、「原子力依存度の低減と再エネの最大限導入をエネルギーミックスにどう織り込んでいくかが議論のポイント」と述べた。原子力の最大の問題は使用済み核燃料とし、「最終処分問題は簡単には解決しないので、空冷式の中間貯蔵をどう充実させるかが喫緊の課題」と指摘。2030年のエネルギーミックスについて、「再エネ30%、コージェネ15%、火力40%、原子力15%」との個人的見通しを示した。

橘川氏は「2030年の需要見通しをまず固めてほしい」と注文をつけた。また、発電コスト検証ワーキンググループにおいては、「逆オイルショック」ともいわれる最近の原油価格下落を勘案することを提案した。

京都大学大学院教授の植田和弘氏は、「省エネ・節電は"新しい電源"として位置づけられる」と指摘し、電力自由化や人口減少の影響も含め、需要見通しを総合的に考えていくべきだと語った。また、再エネ導入には「国内資源の活用や投資を通じた経済効果」があり、その検討を深めるよう要望した。

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