永守重信・日本電産社長--365日、朝から晩まで母に教わった全力疾走(下)

永守重信・日本電産社長--365日、朝から晩まで母に教わった全力疾走(下)

「おカネを借りるときは、親戚から借りたらアカンよ。いちばん貸してくれないところ、大銀行から借りなさい」。安易な道を選ぶのではなく、あえて困難な道に挑戦しよう。母の言葉を披露することによって、永守は社員と自分を鼓舞したのだ。

WPRは想定以上の成果を上げ、業績はとんとん拍子で回復した。そして、09年7月、永守は賃金カットの解除を宣言する。減給期間は6カ月間。その減額分も年末賞与で社員に戻した。「綿菓子」のタイミングを誤たず、ぎゅっと社員を抱きしめたのである。

東洋電機製造での“失敗” 次の標的は電気自動車

昨年2月、バンクーバー五輪のスピードスケート男子で、日本電産サンキョーの所属選手2人が銀・銅メダルを獲得した。本社で開いた祝賀会見。主役を押しのけ、ドンと真ん中に座った永守が何度もこぼした。「金メダルではなくて残念」。

永守にとって「1番以外はビリ」である。何でも1番にならないと気が済まない。だから、新幹線の座席も、いつも1番。がむしゃらのこの馬力が日本電産のエンジンだが、時につまずきの石にもなる。

リーマンショックで揺れた08年、永守は十八番のはずのM&Aで読みを誤った。

この年の9月、日本電産は鉄道用モーターの東洋電機製造に対して、株式公開買い付け(TOB)による買収を提案した。これまでのM&Aはすべて友好的買収か、向こうから頼み込まれた案件ばかり。東洋電機製造では、合意前に買収を発表し、相手側への事前説明もなかった。

東洋電機製造は態度を硬化させた。「いきなり来られてTOBとは--。非常に不満」(当時の経営トップ)。膠着状態が続いた後、結局、日本電産は買収提案を取り下げた。従来の「対話型」で臨んでいれば、事態は違った方向に転がっていたかもしれない。

永守は「日本の資本市場がどう変わったのかを確認するために、TOBを提案した」と言う。一刻も早く頂点へ、という焦りが働いたのか。それとも、08年の前半までの破竹の進撃で心に驕りが生じたのか。

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