ド文系もシステム作れる「ローコード開発」の正体 プログラミングはほぼ不要、DX加速にも期待

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日本だけでなくグローバルでも普及しているのが、アメリカのセールスフォースが提供する「Salesforce(セールスフォース)」だ。

簡単にシステムがつくれる点はキントーンと同じだが、独自にデータベースを設計できる点が違いだ。しかし、その分、専用の開発言語などの習得が必要で、キントーンよりは難度が高くなる。また、キントーンは比較的簡単なシステムが対象であるが、セールスフォースでは大量のデータや取引を扱う大規模システムにも対応できる。

これは、ツールの優劣というより立ち位置の違いであり、両者を使い分けている企業も多い。

ソースコードを極力書かずにシステムをつくれるようになれば、システムのつくり方も大きく変わる。

自分でコードを書く開発の場合、要件を定義し、設計を固めたうえで、ソースコードを書き、問題なく動くかテストする必要がある。一方、ローコードでは、すでに動いている部品の組み合わせでシステムをつくるので、設計、開発、テストの工数を大幅に削減できる。これは、単なるコスト削減や納期短縮にとどまらない。現場で検証と改修を繰り返し、最適なシステムをつくれるようになる。

システムを内製するようになったカインズ

「IT小売業」化を宣言し、この数年で売り上げを大きく伸ばしたホームセンター大手カインズは、セールスフォースを活用してシステムのつくり方を大きく変えた。新型コロナ感染拡大に対応し、店舗の商品検索アプリや、非接触で商品の受け渡しができるピックアップロッカーなどのサービスを、矢継ぎ早にリリースしている。

カインズの池照直樹デジタル戦略本部長は次のように言う。

「今は、自社エンジニアが数週間でシステムを試作し、60ほどの店舗で先行稼働させます。当然、改善の余地がある状態ですが、午前に出した改善要求を午後には反映するくらいのスピードで改修を重ねれば、1カ月ほどで重要な要件はすべて反映されます。そうして、全店に展開するのです」

これを実現するカギは、自社でシステムを開発できるようにすることだ。現場の人々と一緒にシステムをつくるには、業務も深く理解しており、柔軟に稼働できる社内エンジニアが必要で、要件や設計を固めてから外部の開発会社に委託する、旧来のスタイルでは対応できない。カインズも内製化に大きく舵を切り、対応組織は200人を超える。セールスフォースを使い、社内人材である程度のシステムはつくれるようにしたという。

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