日立、東芝、三菱電機「全社過去最高益」のワケ 日立はインフラ、東芝はデバイスが引っ張る

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東芝はスマホ向けのNANDフラッシュメモリなど電子デバイスが好調を続けている

その東芝に迫るのが三菱電機だ。主因は産業メカトロニクス部門。中国でスマホや自動車向けの設備投資が増えたことにより、FA(ファクトリーオートメーション)が絶好調だった。加えて国内製造業が設備更新も追い風となり、部門営業益は1082億円と前年同期の713億円から拡大した。

三菱電機も日立と同様、電力関連の重電システム部門で不安要素が残る。前期にあった国内原発の安全対策工事が一巡したことなどで、営業益は325億円(前年同期433億円)と、全部門中で唯一減益となった。もっとも同部門では中国やASEANにおいて昇降機や交通事業が堅調だ。

第3四半期の実績を受け、3社は今期予想でそれぞれ対照的な動きを見せた。

3度目の上方修正をした三菱電機

通期計画の大幅な上方修正をしたのが三菱電機だ。今回を含め、3度の上方修正。全体の営業利益は、期初計画の2500億円から、今回は2900億円(前期比23.3%)に修正。電力関係に先行き不透明感はあるものの、他の部門で特段悪化しそうな要素はない。毎回、かなり保守的に予想数字を出しており、さらなる上ぶれも期待できる。

日立は通期の営業利益を5800億円(同8.9%増)と見込む。第1四半期と第2四半期に2度上方修正した。ただ、電力関係での案件の期ずれ、また通信関連で海外展開の遅れや国内のキャリアからの投資一巡で、下期に入りやや減速している。2014年2月に三菱重工業との合弁会社「三菱日立パワーシステムズ」に火力部門を移したが、売り上げの剥落分を跳ね返し、全体でもほぼ前期並みの売上高まで近づけられそうだ。

その2社とは対照的に、期初の営業利益3300億円(同13.5%増)という数値を1度も修正をしていないのが、東芝だ。2014年5月に開かれた決算説明会の際、財務担当の久保誠副社長(当時)は「会社計画は最低線。3300億円は最低限のコミットメントだ」と言っていただけに、上方修正の期待もあったが、現在までに見直されることはなかった。理由はPCの構造改革で、この第3四半期までに改革費用を計上、ライフスタイル部門の営業損益は通期でも480億円の赤字になる見通し。デバイスなど他部門が好調なうちに改革断行を決断したと思われる。

各社ともに通期の予想数字を達成できれば、日立は2年連続、東芝は25年ぶり、三菱電機は7年ぶりの最高益更新となる。ただし、新興国の景気不安など、リスク要因も顕在化してきている。来期はこの高水準の利益をどこまで保てるかが大きな分水嶺となるだろう。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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