私はこうやって1日で医療費2万ドルを集めた 医療保険未加入でも高額医療費を賄うには

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重い医療費負担は、病気にかかった人の資産をあっという間に食いつぶしかねない。昨年のコモンウェルス基金の調査によれば、米国に住む65歳以上の87%は何らかの慢性疾患を抱えている。

高齢者向け医療保険制度のメディケアが存在するにもかかわらず、米国の高齢者はほかの先進諸国の高齢者よりも重い医療費負担にあえいでいる。最大の理由は、自己負担分の高さと、メディケアを使うと受けられる治療に限りがあることだ。

新たなセーフティーネットに?

そのすき間を埋めるために参入したのがクラウドファンディングのサイトだった。これらのサイトでは葬儀費用や医療費、介護施設への一時入所の費用といったものの支払いのために寄付の呼びかけが行われている。

たとえばシカゴに本拠を置くクラウドファンディングサイトのギブフォワードでは、2008年の立ち上げ以降、計1億4900万ドルの資金が集まったという。

ギブフォワードの社長兼共同創設者のイーサン・オースティンによれば、集まった金額の大半は思いもかけない病気やケガの治療費に充てられている。「難しい病気の問題をひとりで抱え込むのはよくない」とオースティンは言う。

また最近では、ベビーブーム世代が親の治療のために寄付を募る例が増えているという。「ほかの人の力になるきっかけを誰かに与えること、それ自体がすばらしい贈り物だ」とオースティンは言う。

「5年前なら、費用をクラウドファンディングで調達しようと思う人はいなかっただろう」とオースティンは言う。「だが医療費が高騰するなかで、時代は変わりつつある」

「病人を抱える家族にとって最大の不安材料は経済的なものだ」と語るのは、そうした家族を支援する団体ラトサ・ヘルピング・ハンズ(ワシントン)のブルックス・ケニー副社長だ。そしてケニーに言わせれば、クラウドファンディングはそうした問題を解決する切り札になりうる。

携帯電話が普及した昨今、クラウドファンディングは幅広い人々を対象にしたセーフティーネットとしても機能しうる。

ケアマネジャーであり、高齢者施設バックリーズ・フォー・シニアズを運営するバックリー・フリッカーによれば、現代アメリカはもはや、誰もが病身の高齢者に手を差し伸べてくれるような社会ではない。その代わり、テクノロジーのおかげで全米から支援を集められるようになった。

「テクノロジーがネットという世界に開かれた窓のついた分厚い壁を打ち壊そうとしている。テクノロジーにはバーチャルな形で家族というものを再生する力がある」とフリッカーは言う。

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