権力闘争にうつつを抜かす政治家と、見守る国民の根比べ

権力闘争にうつつを抜かす政治家と、見守る国民の根比べ

塩田潮

 八方塞がりの菅首相の「3月危機」が現実となるかどうか。危機の核は2011年度予算だ。

 戦前の憲法は年度内不成立の場合の前年度予算の執行を認めていたが、現憲法では内閣は予算を国会に提出して議決を経なければならないから(86条)、予算を成立させ、執行させられない内閣は「統治能力なし」で失格となる。

 そこから首相退陣と引き替えに予算成立を野党側と取引する「予算花道論」や、成立阻止を武器に首相退陣を要求する「予算人質論」が出てくる。予算は衆議院の優越で衆議院の議決後に参議院が議決しなくても30日以内に自然成立するから、成立という点では、菅首相はなんとか3月危機を回避できそうだが、問題は執行に不可欠の関連法案の成否である。

 一般の法案だから、衆参での可決か参議院否決の場合の衆議院での再議決が必要だが、数合わせの見通しが立っていない。

 つなぎ法案や関連法案の分割採決などで混乱を最小限にとどめ、統一地方選が終わる4月24日以降、公明党の軟化や国民世論の変化を待って関連法案を成立させるのが菅首相にとって唯一の可能な選択肢だ。だが、その道も通行止めとなったときは、「一か八かの解散・総選挙」か、与野党の枠を越えた大仕掛けの政権組み替えに挑むしかない。

 そうなれば、「4月危機」や連休明けの「5月危機」が現実となる。

 向こう約2カ月、予算を種にした権力闘争が展開される雲行きだ。菅首相側と、野党や民主党内の反菅派のどちらが国民の支持と期待を集めるかが勝敗の分かれ目となるから、その点をめぐって両者の根比べが続く。

 だが、実際の戦いは、権力闘争にうつつを抜かす与野党の政治家たちと、それを見守る国民の根比べであろう。その一方で、直接民主主義の地方の首長選での新潮流への大きな期待と支持が話題となっている。代議政治への絶望の裏返しであれば、危機の実相は菅首相や民主党政権がどうなるのかといった問題よりもはるかに重い。

 議会制民主主義と議院内閣制の存在自体が問われる深刻さである。

塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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