シャープ再赤字、問われる"抜本改革"の中身 「選択と集中」より既存路線で再生目指したが

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中国メーカーの攻勢などで価格下落に見舞われた産業用の太陽電池も、サプライチェーンの見直しといった合理化や海外展開の強化などで、採算を改善させる構えだ。

ただ今回の会社側の説明は、目先の改善策との印象を拭えない。シャープは液晶テレビや太陽電池について、不採算地域での事業展開の見直すことを挙げ、「抜本的な構造改革」を遂行すると強調するが、今後問われるのはまさにこの"抜本改革"の中身である。

「選択と集中」しない社長の信念

「今の事業構造を、このまま維持していく方針なのか」「液晶事業は変動が激しいが、そのリスクをどう考えるのか」――。決算説明会で記者から多く質問が出たのは、シャープの今後の事業ポートフォリオの見直しについてだった。

液晶を柱にテレビや太陽電池の事業を抱えるシャープにとって、本質的な課題はその事業ポートフォリオ自体の収益基盤の脆弱さにある。再成長に向け、シャープの事業の組み合わせをどう見直すのか。そうした問いに高橋社長は、「かつて液晶の一本足打法で、液晶に頼りすぎたから経営危機に陥ったと言われたが、そうだと思う」と振り返った上で、「そういう意味で何本かの足は必要。経営危機を防ぐには、短期的には確かに(事業の)集中と選択が必要だが、それでは絶対に持たないというのが私の信念だ」との考えを披露。事業ポートフォリオの見直しに、否定的なニュアンスを漂わせた。

ただ改めて事業構造の認識を問われると、「事業は新陳代謝する。今の事業と名前が一緒でも中身は変わる。決して今の6事業にスティック(固執)するわけではない」と話し、柔軟に判断する姿勢を強調。具体的な方向性は、5月に発表される見通しの新中計に持ち越される格好となった。

「今儲かっている白モノ家電もしくは複写機事業を売却するか、テレビを含む液晶事業を切り離すか、どちらかの決断をしないと、ジリジリと悪くなる状況が続く」(アナリスト)との声もある。今回の決算説明でシャープ経営陣が強調した「抜本的な構造改革」。5月にはその詳細が問われることになる。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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