自分の死後も安心?ペットのための信託とは 直接の相続はできないが、できることがある

拡大
縮小

 「これまでの方法としては、

(1)ペットの面倒を見てくれそうな人に、遺言で一定の財産を遺贈する(負担付遺贈)

(2)飼い主自身の死を条件として、面倒を見てくれる人に贈与契約をする(負担付死因贈与)

などがありました。しかし、面倒を見てくれる人を信頼するしかないという問題もあり、それほど普及していなかったのです」

自分が死ぬ前から信託を開始できるケースも

そんな状況のなかで新たにできた「ペットのための信託」とは、どんな仕組みなのか。

「ペットのための信託は、信託法を利用した新たな仕組みです。いくつかやり方がありますが、一般的には、まず飼い主を代表とする管理法人を設立し、あらかじめペットに残す財産を移します。

次に、自分が面倒を見られなくなった後に代わって飼い主となる人への遺言書を作ります。そのうえで、法人に移された財産が、ペットの飼育料などに使われるよう、飼い主となる人との間で信託契約を結んでおくというものです。

ほかにも、信託銀行や信託会社と契約を結んで、ペットのための信託を専門とするNPOなどに世話を委ねたり、新しい飼い主を探してもらったりする方法もあります」

このような制度が注目を集めているのは、どうしてだろうか。

「ペットのための信託には、

(a)死亡する前でも、たとえば老後施設に入ったときから開始できるなど、開始の条件を柔軟に定めることができる

(b)ペットの面倒を適切に行っているかどうかを監督する弁護士など専門家を選任することができる

(c)あらかじめ別法人に財産を移すことによって、相続人同士の争いを避けることができる

といったメリットがあるからです」

渋谷弁護士はこのように説明していた。愛するペットのために万一に備える。そんな時代がやってきているのかもしれない。 

渋谷 寛(しぶや・ひろし)弁護士
1997年に渋谷総合法律事務所開設。ペットに関する訴訟事件について多く取り扱う。ペット法学会事務局次長も務める。
事務所名:渋谷総合法律事務所

 

弁護士ドットコムの関連記事
「公衆トイレで彼女としてみたい」アブノーマル男性の願望は「合法」なのか?
「こんなキラキラネームはいやだ!」 子供による「改名」が認められる条件は?
ペットホテルに預けたままの「犬や猫」は落とし物と同じ? 放っておくとどうなるのか 
弁護士ドットコム
べんごしどっとこむ

法的な観点から、話題の出来事をわかりやすく解説する総合ニュースメディアです。本サイトはこちら。弁護士ドットコムニュースのフェイスブックページはこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT