北海ブレントは夏場120ドルがピークで、その後は60~70ドルへ調整《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》

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石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
野神 隆之 上席エコノミスト

--最近の原油高騰の背景についてどう見ているか。

中東情勢の緊迫化以前に、すでに原油価格高騰の流れがあった。昨年8月27日の米国ジャクソンホールでのバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の講演を機に、米国の追加金融緩和(QE2)観測が高まり、9月21日の連邦公開市場委員会(FOMC)でその姿勢が明確化した。失業率が改善するまでFRBが徹底的に市場へ資金供給するという印象が市場で高まったことを受け、米国の景気回復期待が高まり、石油の需給逼迫による先高感が強まった。また、インフレ懸念も高まったことで、金、銀などを含め実物資産に対する需要が増大した。

当時も今も、需給自体は逼迫していない。OECDの原油在庫日数は、1日平均で50~55日が平年並みだが、実際はその水準を上回っている。OPECも増産ぎみで、非OPEC諸国も増産しているため、足元の需給は緩和している状態だが、市場は景気回復による将来の需給逼迫を織り込んでいった。

昨年来、株式相場と原油相場の相関関係が強まっているが、株価は景気回復の指標であり、原油もそれに追随した形だ。

さらに、原油の先高シナリオを補強する材料もあった。OPECが12月11日に開催した臨時総会で、原油価格が80ドルを超えたことに何の対応もしなかった。投機が主導した相場だとして、価格の沈静化に後ろ向きの姿勢を見せたことも、買い安心感を誘った。

また、昨年末にかけて、いくつかの要因が原油高材料として重なった。メキシコ湾岸の精油所が課税対策で減産を行い、一時的ながら米国の原油在庫が減少したことが一つ。中国では、省エネ目標達成のための電力供給カットを行ったところ、工
場の自家発電が増え、そのための軽油の特需が発生した。さらに、欧米が今冬に厳しい寒波に見舞われたことも影響している。

そして、最後に出てきたのが、中東・北アフリカ情勢の緊迫化だった。これがなくても原油はもともと上昇基調にはあり、早晩1バレル100ドル突破はあるとは見ていたが、中東緊迫化でその実現の時期が繰り上がった形だ。

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