「元祖再生人」二宮金次郎に学ぶ地方創生 薪を背負っていたのには、理由があった!

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おカネは借りてしまうと、複利で回せば借金が借金を呼んで雪だるまのように膨らみ、人々を苦しめます。しかし、逆に運用の側に立てば、おカネがおカネを生みます。適切に運用すれば、人々を救い、むしろ豊かにすることにつながることを示してくれています。

収支黒字化と地域金融の仕組みづくりを急げ

今回のコラムで見てきたように、地方創生事業や、地方の自立を考えるうえでは、まさに二宮金次郎の取り組み、それを体系化した「報徳仕法」から学ぶべきことがヤマほどあります。

今の地方にも、行政、企業、家計の全てに「分度」が必要であり、しっかり稼ぎ方を考え、さらに絞り方を工夫して黒字化する知恵が問われています。際限なく借金を重ね、中央からの支援金をもらっても赤字事業ばかりで食いつぶすだけでは地方創生は程遠いのです。今は金利の支払いが膨らみ、地域から複利で資金が流出している状態です。

だからこそ、地域の取り組みについては、地域内の資金で回していくという、金融の知恵も必要不可欠です。

個別の取り組みでしっかり黒字を出していければ、当然おカネを貸せるようになります。地域内の皆で拠出した基金で、地域の一つ一つの取り組みにおカネを貸せれば、その取組みの黒字から金利が支払われ、地域の人々は金利収入を得られるようになります。中央からおカネだけもらって食いつぶすより、数年すればこの複利で回り始めるのです。今の厳しい状況とは、事態がまったく逆転します。

このシンプルかつ原則的な環境を、どうやって地方に作ることができるのか。現代の日本においてもさまざまな取り組みが地方で起きています。過去から学び、現代の取り組みを改めてその視点から評価すると、その意義も変わるように思います。

二宮金次郎の残した知恵を、現代の問題と照らし合わせると、地方創生のあるべき姿の一端がみえるのではないでしょうか。


【参考文献】

猪瀬直樹「二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?」(文春文庫)

鬼頭宏「人口から読む日本の歴史」(講談社学術文庫)

補注 報徳記(上)(下) 富田高慶著佐々井典比古訳注 報徳文庫

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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