米国、2015年の金融引き締めは見送りか 今の米国のマーケットは「鯨幕相場」

拡大
縮小

ECB(欧州中央銀行)の存在理由は、歴代の総裁が言明しているように「物価の安定」である。ドラギ総裁に代わって若干、FRB(米連邦準備制度理事会)や日銀に近づいたが、今回の量的緩和は明らかに元の「物価安定策」である。

今回はいわば「逆安定策」だが、結果的に、景気に追い込まれて出した量的緩和策ではないため、効き目は緩やかなものの、効果はそのうち十分にあらわれてくると思われる。欧州経済は、市場が喧伝しているほどは悪くないと感じる。

厳しい中国経済、日本経済には底堅さ

一方、中国の重要指標の製造業PMIは、国家統計局、HSBCが出している2つの指標とも、趨勢は下向きである。HSBCのPMIに至っては、景気拡大と縮小の分かれ目となる「50」を割り込んで来た(2014年12月は49.6)。

鉱工業生産や都市固定資産投資も下向きで、趨勢上向きの指標は1つもない。マクロ指標以上に中国は厳しいと感じる。融資緩和策をとって必死に支えているが、当分浮上は無理だ。

先日、フィルターを中国で展開している、ある企業を取材したが、不良品の横行で困っているという。どういうことだろうか。

自動車部品などは本来、価格が高くても耐久年数を考えると純正ものを使った方が結果的に得なのだが、フィルターだけは、不良品の方が安くて長く使える。粗悪品のほうが、不純物をスカスカに通すので、いつまでもきれいなためだ。笑い話ではなく、これこそが中国経済の今を映し出す話だ。

さらに、日本経済を見てみよう。アベノミクスの成長戦略と並行して、財政規律もただしていかなければならないので、世の中やわれわれの生活実感はこれからどんどん厳しくなる。しかし、粗鋼生産や建機出荷等、筆者の手元にある19の産業動向指数は、ほとんどが横ばいだが、実は趨勢が下向きのものはない。産業動向指数は、言い換えれば大企業指数。「大企業イコール上場企業」と考えれば、当分の間ではあるが、日本株は安泰だ。

しかも、日本株の需給環境は良く、決算発表も、円安、原油安がマイナスに出ているセクターもあるが、今や平均的にアメリカより安定している。

とはいえ、日銀やGPIFが高値を買い上がってくれるわけではない。アメリカ株が雇用統計まで鯨幕的様相を示せば、日本株も順ぜざるを得ない。というわけで、今週の日経平均株価の予想レンジは?と言われれば、25日移動平均線が位置する1万7370円を基準に、マイナス1%の1万7200円からプラス3%の1万7800円までの「ゾーン展開」になると見る。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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