世界を揺さぶる、原油大暴落の"犯人" 米国シェール革命にも大打撃

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価格暴落には3つの理由がある。一つは世界的な需要の伸び悩み。欧州の景気悪化と中国の成長失速が原因だ。二つ目は需要が鈍っているにもかかわらず、供給が大幅に増えたこと。米国のシェール革命によって、原油の生産量が拡大。OPEC(石油輸出国機構)によれば、2013年は需要と供給がほぼ拮抗していたのに対し、2014年は供給が日量90万バレルほど上回っている。

そして三つ目の理由は、OPECが減産で合意できなかったこと。これまでは原油価格が下がると、産油国で構成され、世界の原油生産の4割強を握るOPECが生産を減らし、価格を押し上げてきた。ところが、昨年11月に開かれたOPEC総会では減産しないことを決定。これがダメ押しとなり、一気に価格が下落した。

OPEC加盟国にとって価格下落は大きな痛手になる。それでも減産しなかったのは生産量の維持を強硬に主張した国があったからである。OPECのリーダーで、世界最大の産油国。サウジアラビアだ。

狙いは「シェール潰し」?

サウジが減産を拒否した理由として挙げられているのが、”シェールオイル潰し”という説。米国はシェールオイルの増産によって、今やサウジやロシアと肩を並べる一大産油国だ。シェールオイルの増産が止まらない状況でサウジが減産した場合、米国にシェアをうばわれるうえに、供給過剰が解消されずに価格も戻らない可能性がある。

ノルウェーのコンサルティング会社、ライスタッド・エナジーの試算によると、中東の油田(陸上)の生産コストは1バレル当たり平均29ドルで、米国のシェールオイルの生産コストは平均62ドル。米国のシェール開発会社の中には、現在の原油の価格水準では採算が合わない企業もあり、破綻する企業も続出するとみられている。

しかし、本当にシェール潰しが目的なのか。そもそも米国とサウジは長年の盟友関係にある。あからさまに米国に牙をむくことは考えにくい。そこで浮かび上がってくるのが、米国と組んでロシアとイランへの制裁に動いた、という見方だ。

昨年9月、米国のケリー国務長官はサウジを訪問。イスラム過激派「イスラム国」対策で協力を求めるという目的だったが、その席で原油価格の引き下げを要請したといわれている。

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