ムーディーズが日本国債の格付け見通しを引き下げ方向に、菅政権の内外の混乱を注視

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 ムーディーズがアウトルックをネガティブに変更した具体的な要因としてあげているのは以下の4点。

(1)世界的な金融危機のショックが、日本の財政および悪化傾向にあった既存のデフレ圧力に、深刻かつ持続的な影響を与えたこと。

(2)それに伴い、現在の政策の枠組みによって、財政赤字削減への軌道に戻す際に直面する課題を克服することが困難となったこと。

(3)債務および成長に関する課題に対し、与野党が有効な政策を打ち出す能力に対する不透明性が高まったこと。

(4)国内の人口動態上の圧力の高まり、および世界的な危機後の脆弱かつ不確実な経済環境において起こりうる新たなショックに対して、日本の長期にわたる漸進的な財政再建戦略が脆弱であること。

同社が将来の格下げアクションにつながる要因としてあげているのは以下の3点である。

(1)政府が包括的な税制改革を実行できない場合、あるいは効果の薄い政策を取ることで行動を無期限に先送りした場合。

(2)国内金融資産が枯渇し、政府のリファイナンスニーズを十分に賄いきれなくなった場合。これは家計貯蓄率がマイナスとなった場合に生じうる。

(3)対外収支が経常赤字に転じた場合。これは貯蓄の減少傾向を受けて生じ、政府の資金調達コストは諸外国の国債市場と同程度まで上昇する。また、日本国債のリスクプレミアムも急激に上昇する可能性がある。
(大崎 明子 撮影:鈴木紳平 =東洋経済オンライン)

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