アイスが3月値上げ、市場拡大に冷や水 メーカーはシニア層向けに高品質で勝負

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海外原料だけではない。国内で生産される生乳(搾ったままの牛の乳)の取引価格上昇も打撃だ。厳しい経営環境により酪農戸数が減少し、生乳の生産量も減り続けている。生乳は生産者団体とメーカーの協議によって取引価格が決まるが、北海道のホクレン農業協同組合連合会との取引の場合、2010年度以降2015年度分までの5年間で1キログラム当たり平均約11円上がった。

原料が不足する可能性も

さらにチョコレートも相場が高騰、電気料金も上昇と、まさに泣きっ面にハチの状態。ある大手メーカーは、「乾いた雑巾を絞るように企業努力はしているが、ここ2~3年の間に原料コストは2割ほど上がった。もう我慢しきれない」と嘆く。

苦しい状況ではあるが、同時にアイスは「魅力的な市場」でもある。日本アイスクリーム協会の統計によると、2003年には3322億円であったアイスクリームの販売額は、2013年には4330億円へと約3割も拡大した。「高品質の商品が増え、多少価格が高くても購入する人が増えていることや、アイスを食べることに抵抗のないシニアが増え、購買層が拡大していると見ている」(同協会の小林景専務理事)。

市場拡大を追い風に、明治は2011年、大阪でアイスの新工場を稼働させた。江崎グリコも大人向けを意識して、定番商品のビター味を発売するなど、各社は独自戦略を繰り出している。ただ原料の需給逼迫が続けば、再値上げだけでなく、原料が不足する可能性もある。アイスメーカーが一息つける日は遠そうだ。

(「週刊東洋経済」2015年2月7日号<2日発売>「価格を読む」を転載)

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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