(第53回)労働人口が減るのに外国人に門を閉ざす愚

(第53回)労働人口が減るのに外国人に門を閉ざす愚

これまで見てきたことを繰り返せば、次のとおりだ。すなわち、中国のGDPは日本を抜き、研究者や論文の数、一流大学の数とその学生数は、ほぼ同水準になった。1人当たりでみれば、中国は日本の10分の1だ。ところが大学卒業者総数は、中国が日本の12倍なのである。

これを一言でいえば、「所得水準が低い中国で、経済活動に見合わないほど大量の大学卒業生が生産された」ということだ。産業構造が高度化していないにもかかわらず、あまりに大量の知識労働者が養成されてしまったのだ。中国は「頭でっかち」になっているのである。

その当然の帰結として、彼らのすべてが大学卒にふさわしい職を得ることはできない。経済危機後の中国では、内陸部で公共事業型の経済刺激策が行われたため、余計にこの傾向が強まったようである。

中国社会科学院の2009年度版「経済白書」によれば、08年末で就職できない大卒者が約100万人いる。前回述べた08年の大卒者数字を分母にとれば、失業率は18%ということになる。ただし、実際の失業率は30%を超えるとも言われる。

「蟻族」(大学卒のワーキングプア)は、「コネがないから就職できない」のだという。確かにそうであるかもしれないが、経済全体では知的労働者に対する需要に比べてあまりに多くの大学生を生産してしまったことが原因である。だから中国の知的労働者は失業するか、単純労働に従事するか、あるいは海外で働かざるをえない。

逆に言えば、日本企業が中国の高度人材を活用しようとするなら、いまなら十分可能である。日本以外でも、日本と同程度の所得水準の国なら可能だ。これは、過去においてはできなかったことだ。現時点の中国と他国の間だけでできることである。ただし、この状態が将来も続くかどうかはわからない。

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