官製ワーキングプア解消へ「公契約条例」が広がるが、進まない国での法制化

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 残された課題は何か。『公契約条例入門』著者の小畑精武氏は、「入札で委託企業が入れ替わるときの、労働者の雇用を守る原則の確立が急務」と語る。入札ごとに雇用継続や労働条件が大きく変わるようでは生活の安定は到底望めない。だが、この規定を入れようとした兵庫県尼崎市の公契約条例案は、市当局の反発が強く不成立に終わった。野田市の改正条例でも努力義務止まりだ。

いずれにせよ自治体のみに委ねてよい問題ではない。霞が関自らワーキングプアを生み出している現状からしても、「公契約基本法」の制定による法規制は必要に迫られている。

野党時代は法案策定も幹部落選で振り出しに

この点、政府・民主党最大の支持母体である連合も、かねて公契約基本法・条例の整備を主張してきた。連合の逢見直人副事務局長は、「法案要綱案を目下準備中。政策協議の場など政府への働きかけを強める」と力を込める。

ところが肝心の政府の動きが鈍い。実は09年、当時野党だった民主党中心の参議院小規模事業対策議員連盟が「公共工事報酬確保法案」を策定。対象を公共工事に限ったが、公契約基本法とベースは共通している。

ところが「当時の政策審議会の中で、一人だけが猛反対した」(関係者)結果、上程されなかった。その後の参院選で同議連の幹部が軒並み落選。「推進役が見当たらないどころか、窓口担当者から再構築が必要になった」と関係者はあきらめ顔だ。本来、公契約基本法の制定は格差や不安定雇用の拡大を問題視する政府・民主党にとって、格好の金看板となるはずだ。にもかかわらず、公共サービスの現場が壊れる事態を座視するようでは、こうした主張の本気度にも疑問符が打たれかねない。

(岡田広行、風間直樹、小河眞与 =週刊東洋経済2011年2月26日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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