『ジョーカー・ゲーム』、"大作抜擢"の心構え インディーズ出身の入江監督、メジャーへ挑む

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――メジャー作品とインディーズ作品では観客のターゲットも変わるため、宣伝の仕方も違ってくると思います。その違いはどう見ていますか。

『SR サイタマノラッパー』のときは試写もできず、自分でDVDを焼いて、いろんな雑誌に送っていました。きっとほとんどゴミ箱に直行したと思うのですが、まずは映画を見ていただく機会が増えたっていうのが全然違いますね。

それからこれは今まさにその渦中にいるわけなんですが、どのくらいの人が見てくれたらヒットなのかが実感が湧かない。もちろん数字としてはわかるのですが。『SR サイタマノラッパー』のときは、都内1館で上映とかだったので、この1館が満員になればいいんだと思っていましたが、『ジョーカー・ゲーム』の場合はもう300館以上。それが何人なのか、なかなか実感が沸かないですね。そういう違いも今は勉強している最中です。

 僕らの世代がベテランの技を吸収しないとまずい

(写真:梅谷 秀司)

――今回のスタッフ編成はどのように考えられたのでしょうか。

カメラマンというのは監督の女房役みたいなものですが、僕みたいな新人の場合はカメラマンが支柱となるわけです。最初にプロデューサーから、カメラマンをどうするかと聞かれた。僕は北野(武)映画が大好きだったので、北野作品をずっとやってきた柳島(克己)さんにお願いしたんです。撮影の柳島さん。そして『敦煌』などをやられている録音の橋本泰夫さんというベテランの力を借りようと思いました。

音楽の岩崎太整、脚本の渡辺雄介さん、そして美術の小島伸介さんも僕と同い年なんですが、まさに僕らの世代が、日本映画界のトップにいるベテランが築いたものを吸収しないとまずいんじゃないかという思いがあった。僕ら世代とベテラン世代をうまくミックスさせたスタッフィングにさせてもらいました。特に時代劇なんかはそうですが、早く受け継がないと伝統が失われてしまいますからね。

――今回、ベテランと組んだことで勉強になったことは?

細かいところでいうと、雪はどうやって降らせたら美しく見えるのかとかですね。海外で撮影したときに、カメラマンが水をまけ、とおっしゃって。水をまくことによって地面がすごく色っぽくなるんです。その見せ方はベテランが築いてきた技ですし、そういうところは実際に自分の目で見ないと学習できないところ。そういう意味でベテランのスタッフから教わることは多かったですね。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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