トム・クルーズが「銀幕イケメンスター」を貫く訳 「トップガン マーヴェリック」で観客を魅了

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そうやって作った映画を、トム・クルーズはビッグスクリーンで見せることに断然こだわる。テレビドラマに出るのが嫌なのだから、もちろんそれ以外の選択肢はないのだが、パンデミックで数々の映画が配信での公開に変わる中でも、クルーズは『トップガン マーヴェリック』を映画館で公開すると主張し続けたと言われている。

お披露目の仕方も華やかだ。ようやくサンディエゴでプレミアとなった時、クルーズは、『トップガン マーヴェリック』のロゴが描かれたヘリコプターに乗って現れたのである。これ以上に映画スターらしい登場のしかたがあるだろうか。そこでプレミアされた映画は、アクション、恋愛、ユーモア、葛藤など、ハリウッド映画の良いところを全部上手に詰め込んだ、ポジティブな意味で王道の娯楽映画だった。

ハリウッドスターとはどういうものか見せつけた

その作品は全世界の観客を魅了している。今のところ、観客の中心は40代以上のようだが、アメリカで学校が休みに入り始める中、子供を連れて劇場に観に行く人がこれから増えるだろうと予想される。これだけ話題になったことで、若者にも「真のハリウッドスター」が出る映画とはどういうものかをリアルに体験する人が増えるかもしれない。

ドッグファイトシーンで魅せるトム・クルーズ(C)写2022 Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.

時代の変化によって失われていく伝統は、どの分野にもある。クルーズは、そのひとつを守ろうとしているのだ。その姿勢にも、それができるという事実にも、敬意を払わざるを得ない。彼はきっと「映画スター」としてキャリアを終えるのだろう。それはとても特別で、尊いことではないだろうか。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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