ハラスメント被害が軽視されがちな「根深い理由」 頼るべき専門家が見つからない、構造的な問題

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今野:第一に勧めることとしては、とにかく職場から離れることです。休職するなり退職するなり、とにかく職場から離れないことにはその次の動きに移っていけません。離れたうえで、ハラスメントを理由にストライキを起こすなり、カウンセリングや治療を始めるなりということが始まっていく。

――ほかにも利用者の方に勧めていることはありますか?

今野:当人の状態にもよりますが、できる範囲で上司やハラスメントをしてくる人との会話を録音することは非常に大きな意味を持ちます。というのも、単に証拠を残すためだけでなく、当人のメンタルケアとしても非常に有効なんです。

やられっぱなしだとどんどん無力感に苛まれていってしまうけど、無抵抗ではない、自分が何か行動を起こしていると思えると少し支えになるのではないかと思います。

――パワハラ被害者の中には、相談に行くことすらできない人も数多くいるかと思います。そういった方はどうすればケアに繋げられるでしょうか。

今野:うつ状態の渦中にいる方はなかなか来られない場合が多いかと思います。そういう方の場合、家族からご相談が来るパターンが非常に多いです。

もちろん本人が自発的に相談に来られる場合もありますが、本人が相談に来ることを望まないケースも多く、そういう場合は家族が説得して連れてくるほかありません。

そして、このタイミングで会えないと、自死を選んでしまうことがあることにも注意が必要です。過労自殺は、入院してからもう1度がんばってみようと会社に戻って数日後に亡くなるケースが非常に多いんですね。だから、その直前で我々のような支援の窓口に繋がれるかどうかが重大な分かれ道になります。

――家族が相談に行くことを勧めるとも限りませんよね。

今野:はい。親と関係を絶っている方もいますし、残念ながら会社の側に立ってしまう親もいます。というか、支援をしている中での体感としてはそちらのほうが多いくらいです。「とにかく我慢しなさい」「働くというのはそういうものだ」と、家族からさらに追い込まれてしまうんです。

逆に家族が相談を勧めても本人が「現実をわかってない」「今はこれくらい厳しいんだ」「これくらいで辞めたら他に働けるところなんてない」と反発してしまうこともあります。

被害者のその後とは…

――団体交渉や訴訟をされた方は、その後、どのような人生を送られるのでしょうか。

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