危険なマニュフェスト無視の増税路線

危険なマニュフェスト無視の増税路線

塩田潮

 2月17日に民主党の反菅派の衆議院議員16人による造反劇が表面化した。

 衆議院での再可決による予算関連法案の成立が事実上、不可能な情勢となり、首相辞任と引き替えに成立を図る「予算花道論」や、拒否した場合の「菅降ろし」の動きが加速しそうな空気だ。それに対して、菅首相が「破れかぶれ解散」に走る可能性もあり、政局が緊迫してきた。

 造反組の決起は党内権力闘争の側面が強いが、「民主党政権交代に責任を持つ会」を名乗り、2009年総選挙のマニフェストの実行を掲げる。民主党では2月8日に「マニフェスト財源の確保研究会」も旗揚げした。さらに18日には東京選出議員が枝野官房長官にマニフェストの順守を申し入れた。「マニフェストを守れ」の旗を掲げて闘いに挑む構えだ。

 ところが、民主党のマニフェストはいまや悪評だらけで、自民党や公明党だけでなく、多くのマスコミも「矛盾だらけ」「破綻」と問題にしている。確かに総選挙対策用のばらまき政策のオンパレードという批判は当たっている。

 公立高校の無償化はともかく、子ども手当、農業の戸別所得補償、高速道路無料化などは「絵に描いた餅」に終わりそうだ。

 だが、民主党のマニフェストが、新政策の実行・実現という予算の使い方とともに、無駄の根絶、一般会計と特別会計を合わせた国の総予算の全面組み替え、公務員制度の抜本改革など、過去のシステムや構造の見直しと改革を唱えていた点を見逃してはならない。新政策のほうは、財源の手当てが曖昧で破綻寸前というのはそのとおりで、大幅修正は不可避だが、過去のシステムや構造の見直しと改革のほうは、むしろ民主党政権の努力不足や挑戦意欲の後退が問題で、マニフェストの破綻という話ではない。

 菅首相にすれば、小沢・鳩山体制で策定された2009年マニフェストは無関係と言いたいのかもしれないが、マニフェストを無視して増税路線を走り続ければ、敵は少数の党内造反組だけにとどまらず、「反菅」の炎はあっという間に国民の間に燃え広がるだろう。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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