ベネフィット・コーポレーション登場の意味とは 「意識の高い」株式会社を作る方法を考える

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しかし、これらの企業は営利組織で、その最大の目的は株主のために利潤を追求することであることから、これらの企業の利益は公益の保護者として活動する規制当局の利益と激しく対立する。

その結果、これらの企業は規制を回避するために可能なことは何でも行うようになり、さらには規制を新規参入を妨げるための比較優位に利用しようとするようになる。

このような理由から、規制は失敗に終わってきた。しかし、銀行や公益事業会社をベネフィット・コーポレーションに組織変更し、公的目的の追求をその免許付与の条件の1つとすれば、取締役の信認義務はもはや株主の利益を図るために規制を回避することではなく、会社定款の一部として規制目的の実現に向かうことになる。

もちろん、それらの会社が掲げる目的がすべて啓発されたものではないだろうから、贈賄、腐敗、人権、相場操縦、市場阻害行為、環境上の義務といった観点から、会社の掲げる目的についてすべての会社に共通する最低限の基準が設けられるべきである。

産業財団はなぜうまく機能したのか

われわれは、例えば19世紀の初頭に労働者を保護するために制定された工場法のような社会立法に過度に依存すべきではない。このような立法は多国籍企業によって、原材料の供給や労働力の確保についてこのような社会立法が存在しない法域へ外注するという方法で全面的に回避されてしまうからである。

生活を支える賃金の支払いや安全で衛生的な工場の条件として、最低限の基準が、全世界におけるサプライチェーンや製造過程のすべての段階で適用されるべきである。

しかし、これらは、産業財団の設立者が行ってきたような形で、はるかによく実現することができる。産業財団はその利益を事業に投資し、そして剰余金を慈善事業に寄付する。

産業財団の最も重要な目的は、ロバート・ボッシュやカールスバーグといった傘下の企業が、その創業者によって定められた目的、原理、価値観を順守するよう監督することにある。もし監督に失敗した場合、その責任をとるのは財団の中の受託者評議会である。

さまざまな理由から、産業財団の設立者はその会社を自分たちの子孫に手渡さなかった。恐らく、彼らは子孫を持っていなかったか、子孫を信頼していなかったか、または子孫を好きではなかったからだろう。

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