800人の限界集落が「デジタル村民」集め目指す世界 NFTを村民の証しに、村のガバナンスにも参加

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そこで、そのコミュニティーに対する貢献度の高さや参加歴を投票権に反映させることも考えられます。

このようにweb3では、これまでの世界ではできなかったような壮大なガバナンスの実験が行われているところなのです。僕の友人で世界一有名な憲法学者の1人、ローレンス・レッシグさんも、そこがweb3でもっとも興味深いところだと話していました。

既存の世界は、新しい経済圏を敵視するか

着々と存在感を増しているweb3に対して、既存世界はどう反応するでしょうか。おそらく多くの人は、「怪しい」「危なそう」という疑念半分、「おもしろそう」「役に立ちそう」という期待半分でweb3の様子をうかがっているところだと思います。現時点では、日本国内に反対の機運はあまりないようです。

ただし、web3が広まり、新しい経済圏、クリプトエコノミー(暗号資産によって成り立つ経済圏)の影響力や存在感がますます増してくると、フィアットエコノミー(法定通貨によって成り立つ経済圏)側で危機感が高まる可能性はあります。その影響で、フィアットエコノミーの中心部から規制の動きが起こってくるかもしれません。現に、より法定通貨に近い役割を果たしているステーブルコインの規制を強化する動きが活発化しています。

とくにフィアットエコノミーが盤石な国では、クリプトエコノミーに対する警戒心が強くなりがちです。強い通貨、強い中央銀行、強い政府、強い大企業、強い既存産業。盤石なフィアットエコノミーには「守りたいもの」が多すぎるのです。

クリプトエコノミーをどう規制するか、あるいは規制しないか。この点については、他国でも紆余曲折が見られます。とにかく新しい経済圏ですから、どう扱うかを試行錯誤している段階なのです。

たとえば中国では、2021年9月、デジタル人民元の発行に先駆けて、暗号資産の関連サービスが全面的に禁止されました。すると大量の暗号資産が一気にDeFi(Decentralized Financeの略称。分散型金融)に流れ込み、強い規制がかえってクリプトエコノミー拡大につながるかたちになりました。

ヨーロッパでは、ドイツが暗号資産への課税を強めると発表したとたん、皆ポルトガルに逃げ、迎え入れたポルトガルでも課税が強化されるという珍事がありました。アメリカも暗号資産への課税は重いほうです。税制が有利なシンガポールやケイマン諸島に逃がす人も多く、重課税を避けるためにクリプトマネーが世界中を逃げ回っている状態です。

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