日本人のIT活用は、ものすごく非効率だ

自分たちも気づいていない強みを意識せよ

「稼ぐ力」をどうやったら身に付けられるか(写真:kou/Imasia)
閉塞感を打破し、稼ぐ力を取り戻す日本人の付加価値アップの公式とは。『日本人の「稼ぐ力」を最大化せよ』(東洋経済新報社)を書いた野村総合研究所の谷川史郎理事長に聞いた。

──冒頭にあるカトリックの総本山、バチカン市国とのエピソードが心強いですね。

聞かせてくれたのは国立公文書館の前館長でフェローの高山正也先生。バチカンの図書館にある約8万冊の古文書の電子化プロジェクトを日本企業が請け負った。その際、バチカンが評価したのは技術だけでなく、電子化したデータのバックアップの保管・保存に関して、宗教に対する日本の寛容性が大きな魅力だったという。日本人はとかく無宗教だと自嘲的に言うが、バチカンは八百万の神を含めて「節操のない信仰心」に違和感はなく、むしろ特殊性として評価している。

──強みになる?

日本人が意識すらしなかった宗教的寛容性が魅力に映ったわけだ。自分たちでは気づいていない強みはほかにもたくさんあり、外との接点を豊かに持てば、外部視点から意外な強みが浮き上がってくる。

受容し、変容させて超越するのが日本文化

──日本社会や文化がブランドになるのですか。

日本の文化は海外から伝来した文化を取り込んで、それを国内で自分たちなりに解釈し、オリジナルを超越していくことを繰り返しやっている。つまり受容し、変容させて、超越する。この一連の流れは改良・改善で日本の物作りに反映されているが、この面では諸外国にキャッチアップされた。

違うのは、日本はこの受容・変容・超越をいくつも同時に多層でやっていることだ。受容・変容・超越という行為を単純に一方向の流れとするのではなくて、外から入ってきたいろいろなものをまぜこぜにする。それは言葉を換えれば多様性を尊重すること。多様なものが多様なものに変わっていくことに対して極めて寛容なところがある。並存しても誰も違和感を抱かない多様性に対する寛容さは、日本の誇れる強みなのではないか。日本の強みを定義し直すことが必要になってきた。

──海外発が加わりアニメや「かわいい」がもてはやされています。

文化とまでいわなくても、日本人がどんなライフスタイルを持っていて、そのよさは何なのかを伝えることで、世界の中で日本が貢献できる要素はまだ大きくある。

谷川史郎(たにかわ・しろう)●1956年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、野村総合研究所入社。取締役常務執行役員コンサルティング事業担当兼システムコンサルティング事業本部長、取締役専務執行役員コンサルティング事業担当兼未来創発センター長などを経て、2014年より現職。著書に『2020年の日本』など。

アニメやかわいいを外が発見してくれてそのまま受け入れているが、実は日本のコンテンツを海外に紹介しようとしても英語できちんと紹介されているものはない。日本語ででさえしっかり説明されているものは意外に少ない。たとえば日本文化そのもののわかりやすい解説も、またクールジャパンの定義もない。ジャパニーズ・ポップカルチャーでありサブカルチャーである、と書いてあるものもあるが、「それって何?」と再度問うことになる。

自分たちでどう発信するか。そろそろまじめに考え、ロジカルに理解して伝えていく。実はこれが次のビジネスチャンスを生む。そういうタイミングに今入っている。

──競争力の基盤になる?

「日本力」で使い切っていないものがいくつもある。文化はその最たるものだ。その際、日本の各地域の産物を見直すのは確かに大事だ。ところが、今は地方の物産を大消費地・東京に売るスタンスだ。たとえば、松阪牛、佐賀牛、米沢牛などといった売り込み。東京もあと5年もすれば人口減少が始まり、食べ物を売り込んでも上限が見えている。海外からの目線に変えないと短期勝負になる。外に向かってなら和牛は何が違うのか一丸となってメッセージを出していくべきだろう。来日観光客の目にも触れるように。その転換を今起こさないと、チャンス自体も雲散霧消しかねない。

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