アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景 バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか

拡大
縮小

ここ最近ではアメリカ、日本、韓国の3国間の協力関係の重要性を強調する発言や政府関係者の会合が相次ぐようになっている。しかし、いまだ韓国と日本は戦時中からの負の遺産を克服できておらず、そのことにアメリカ政府関係者は強いフラストレーションを感じており、愚痴を耳にすることもよくある。

バイデン政権には、オバマ政権での要職経験者が多く参画している。中には安倍政権および朴政権の初期に韓日関係の悪化が始まった際に、その関係改善に取り組んだ者もいる。

そして、当時繰り広げられた議論の一部が今また繰り返されている。政府関係者の中には日本と韓国に、両国が連携するのは戦略的に非常に重要なことなのだということを思い返させることに焦点を置きたいと考えている者がいれば、地政学上のメリットで無理やり連携したとしても、関係悪化の根本的な原因である、戦時中の歴史的問題に真正面から取り組んでいくことなくして成功は覚束ないというように考える関係者もいる。

楽観的観測が持たれる状況に

今回、韓国に保守政権が誕生したこと、そして、日本では外務相にワシントン通の林芳正氏を擁する岸田文雄政権に政権運営が移行したということもあり、一部で多少なりの楽観的観測が持たれる状況を生んでいる。

北朝鮮でミサイル発射実験が活発化してきており、さらに核実験再開の準備が着々と進んでいるという状況、そしてウクライナ戦争という世界的に緊迫した情勢が組み合わさることで、日本と韓国が両国の関係を改善し、アメリカを含めた3国間の安全保障協力関係を緊密化していこうとする機運が醸成されることになっているように思われる。

だが、バイデン政権の幹部の中にはーーこれには以前に深く関与した経験を有する者も含まれるのだがーー関係正常化は係争となっている歴史問題についてアメリカの積極的関与、といってもこれは必ずしも仲介を意味するわけではないが、それがなくとも起こりうるものであり、まして和解となればなおさら起こりうるものであるとして、この案に反対する者もいる。

次ページ政府高官「日韓関係はクアッドより重要」
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT