永守重信・日本電産社長--365日、朝から晩まで母に教わった全力疾走(上)


 総勢10万人の社員を路頭に迷わすことになるのか。どういう手を打ったらいいか。考えに考えた。図書館に通い詰めて、本をむさぼり読んだ。1930年の世界恐慌の際、GEが採用した対策も徹底的に研究したが、どれもしっくりこない。

眠れない日々が続いた。意識が朦朧とする中、永守の思いが戻っていく先は、1つしかない。母親の奥深い懐だったはずである。

雇用は天守閣 求心力の3つの理由

母タミは永守の人格形成において、決定的な影響を与えている。

永守は母の寝顔を見たことがない。家族の誰よりも早く起きて、誰より遅く寝た。貧乏で苦しんだが、近隣の田畑を買い、地元で有数の地主になった努力の人だった。

「日本電産の社訓(「情熱・熱意・執念」「知的ハードワーク」「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」)も、すべてが母の教えからきている。母を抜きにしては語れない」。

起業を決めたとき、タミは猛反対した。了解を求めて必死に食い下がる永守に、母は最後に言った。「会社を起こすなら、人の倍働くか。倍働かないと、成功できんよ。人並みに働いて成功なんて絶対にない」。

これや。これしかない。母親の教えに戻るのだ。緊急対策「ダブル・プロフィット・レシオ(WPR)」のイメージが突如、浮かんだ。

生産性を2倍にし、損益分岐点を大幅に引き下げて、売上高半減でも黒字を出せる体質に変える。そうすれば、売上高がピーク時水準に回復した暁には、利益が倍増する。そのために、今、2倍働こう。途方もないシナリオである。

WPRと同時に、賃金カットに踏み切った。ここでも、永守は悩み抜いた。年末、財務系の幹部が永守に詰め寄っていた。「100年に一度の金融危機です。今回はリストラ(人員整理)を決断してください」。=敬称略=

■(中)に続く

(梅咲恵司 =週刊東洋経済2011年2月19日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

ながもり・しげのぶ
リスクに果敢に挑戦する。「安全第一の人生なんて、送る気はしない」。ゴルフの際、キャディのアドバイスを無視して池越えを狙う。結果は「池ポチャや」。失敗しても、「ネアカいきいき、へこたれず」。経営も右に同じ。「人生はサインカーブ。平坦ではなく、悪いことも、よいこともある。どうせなら、楽しまないと」。

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