永守重信・日本電産社長--365日、朝から晩まで母に教わった全力疾走(上)

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 一方のハードワーク。これこそが永守の本領だ。掲げた創業精神は、「努力は人を裏切らない」。休むのは正月の朝だけ。毎朝6時50分に出勤し、最低でも12時間働く。社員から届く事務報告などのメールは一日300通以上。土・日曜日にも海外スタッフから500通のメールが届き、ときには、自宅の風呂場に携帯電話を持ち込んで、幹部と話し込むこともある。

ウソのような本当の話。3年前、長年連れ添った夫人が思い詰めた表情で永守に迫った。お願いだから、本当のことを言って--。

「知り合いの医者に言われたんだよ。『あなたの旦那さんは絶対に、麻薬をやっている。そうでなければ、あんな働き方はできない』と」

永守にクスリはいらない。全力投球が自然体なのだ。「経営者は自然体がいちばんいい。社員に対してもお客さんに対しても、誰に会っても変わらない。つねに全力投球」。

「楽しいのは、会社が大きくなること、新しい社員が入ってくること、買収した会社を再建すること」。永守は、ハードワークも社長業も、心の底から楽しんでいる。

ところが、08年、その永守がどん底にたたき落とされた。「アカン。会社が潰れるかもしれない」。リーマンショックの勃発である。

景気の変動をモロに受ける情報機器向けのモーターを主力としているだけに、インパクトは強烈だった。

「売上高がドーンと半分になった。計算すると、毎月100億円の赤字が出る。3年ぐらいはこの状態が続くかもしれない。このままでは、アウト。36年間やってきた会社が、ついにパーや」

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