08年の再来?足元で加速「世界食料危機」の深刻度 ウクライナ侵攻で小麦やコメ、肥料価格も高騰

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あわてたのが、主食のコメを輸入に頼っている国々だった。それで、世界に流通するコメの需要が高まり、米価が一気に高騰したというのが現地での見立てだった。

そのインドが今月13日に、こんどは小麦の輸出を停止した。小麦の生産が世界第2位のインドでは3月に観測史上最高の暑さを記録し、農作物の生育が打撃を被った。国内供給を優先させ、やはり国内価格の上昇を抑える目的だ。

また、アメリカをはじめとする各国のインフレも深刻さを増す。メキシコでは4月のインフレ率が7.68%となり食料品の価格が高騰した。ドイツでも今年中にインフレ率が7%近くまで上昇すると予測。国際通貨基金(IMF)は4月に2022年の世界のインフレ率が前年比7.4%とする見通しを示している。前年10月時点で3.8%としていた見通しを大幅に上方修正している。それだけ世界のインフレ懸念が高まる。

日本は自給できるコメがあるから大丈夫?

日本は小麦が高騰したとしても、ほぼ100%自給できるコメがある。すでにパンやパスタの値上がりに、即席米飯(パック米飯)の市場が拡大し、米粉パンへの関心も高まっている。

岸田文雄首相は4月26日の記者会見で小麦の売り渡し価格について「9月まで急騰する前の水準に据え置く」としたうえで「国産のコメや米粉、国産小麦への切り替えを支援する」とも述べた。

だから大丈夫、かといえばそう簡単な話でもない。肥料の価格が上昇しているからだ。ここにもロシアのウクライナ侵攻が暗い影を落とす。世界銀行が算出する2010年を100とする肥料価格の指数が今年3月に237.6と、前年同月の2.3倍に急騰し、ここでも2008年以来の高値を記録している。

窒素、リン、カリ(カリウム)は肥料の3要素と呼ばれるが、このうちカリはロシアとベラルーシが世界の生産シェアの35%を占める(2020年)。ウクライナ侵攻による経済制裁で両国から西側諸国への輸出が減った。日本もロシア産の塩化カリウムの輸入を停止した。このため、塩化カリウムは3月に1トン562ドルと前年の2.8倍まで上がり急騰している。

肥料の供給が滞れば、それだけ収穫量も減る。収穫量が減れば、供給も落ち込み、価格も上がる。しかも高騰する肥料のコストを上乗せすれば、さらに価格が上がる。

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