北朝鮮にも、ついに国営コンビニが出現? すでに平壌に3店、朝のおかずを買う市民も

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1990年代からの、いわゆる「苦難の行軍」と呼ばれた経済難を克服する過程で生じたのがこのチャンマダン。北朝鮮当局は、当初国営商店以外での商行為を取り締まってきたが、現在では市民たちの生活にがっちりと組み込まれるほどの存在になってきた。輸入品をはじめとする商品価格、さらには為替レートも国定レートと実勢レートの乖離が拡大、現在でも北朝鮮当局がうまく管理できていない部門になっている。

そこで、2010年ごろから緩やかに経済が改善するなか、財政的余裕が出てきた北朝鮮当局は、平壌を中心に大・中規模な商業施設を建設し始めた。その目的は、市民が持つ外貨などの使い先をこれら商業施設に向けさせることで、市民らのカネや商行為・消費行為を国が管理しやすくするためだった。その延長線上に、今回のような新たな形態での商業施設の開業・設置があると思われる。

結局は、国家による経済管理の一環

「黄金野商店」は現在3店だが、いずれも商業地区と隣接して設置されているようだ。それも、チャンマダンよりは足を運ぶのにも便利で、かつ快適な消費行動をアピールし、市民の財布のひもをこのような商店で開かせるという意図がありそうだ。

前出の貿易会社社長は、今後は顧客への宅配や移動販売、さらにはクリーニングの受付や飛行機や列車の切符販売といった、まさに日本のコンビニで行われるようなサービスも視野に入れているという。今春までに平壌中心に20店舗、近い将来には全国で100店舗を出店させる意向のようだ。

国家が主導するコンビニ戦略だが、前述のような仕入れ・販売方式がどこまで可能なのか。事業が成功するかどうかは、既存店の今後の状況を見守る必要がありそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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