月桂冠、女性を酔わせる「いちご酒」の秘密 酒類メーカーもいちごイヤーに積極参戦

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田中さんのコメントからも分かるように、月桂冠の本社は京都、伏見。徳川三代将軍の頃、1637年(寛永14年)に創業した超老舗の日本酒メーカーだ。しかし老舗というイメージに頼りきることなく、常に新しいビジネスを開拓する社風を持つ。例えば1961年には年間を通して酒造りを行うことができる「四季醸造システム」を確立しているし、1989年にはアメリカに米国月桂冠を設立。現地生産により、世界に日本酒を普及させることを目指している。

また国内でも、伝統や日本酒の既成概念にとらわれない酒造りを行っている。2008年には健康需要に応えるべく「月桂冠 糖質ゼロ」を発売。そもそも米から造る日本酒は糖質のカタマリのはずだが、独自の特許製法で「糖質ゼロの日本酒」という概念を具現化した。

女性を意識したお酒造り

「ほろどけ」シリーズも、その同社の挑戦の流れのなかに位置する商品だ。今や女性がお酒を飲むのは一般的だが、一昔前は、どちらかというと「お酒を飲むのは男性」というイメージが強かった。女性がお酌をするのではなく、自らお酒を飲むCMも、出始めたのはつい近年の感がある。しかし月桂冠では時代を先取りして女性を意識したお酒造りを始めていた。

2000年には、酒質ごとに色とりどりのおしゃれな小型容器(135ml)に詰めたプチムーンシリーズを発売している。このプチムーンは今も健在の、同社の人気シリーズだ。

また2002年に新しいブランドコンセプトを掲げたことも、この方向に拍車をかけたと言えるだろう。すなわち、「(1)清酒事業の深耕・拡大、(2)清酒以外のアルコール事業の強化、拡大、(3)海外事業の推進、(4)アルコールにとらわれない新規事業の開拓・展開」である。背景としては、清酒やビールの販売数が年々縮小し、発泡酒、リキュール、その他の醸造酒、果実酒等に需要が移行していることが挙げられるだろう。

2010年にはコラーゲンペプチド配合の「キレイ梅酒」、2011年にはヒアルロン酸配合の「キレイ桃酒」を発売。インタビューやマーケティング調査、女性誌とのコラボレーションなどを行い、女性のニーズに合う商品の商品化を進めてきた。商品開発担当者も全体の1/3ほどは女性だとのこと。

しかしいくら「女性ターゲット」を前面に押し出したとしても、「味は二の次」では女性の支持を得ることはできない。「おしゃれで、美容や健康によくて、美味しい」と三拍子が揃っている必要がある。さらに言えば、コストパフォーマンス。財布に優しいのも重要なポイントだ。

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