シャルリの描き方の違いに見る差別意識

塩尻宏・元駐リビア大使に聞く(前編)

しおじり・ひろし●1941年大阪府生まれ。大阪外国語大学アラビア語学科卒。67年外務省入省。中近東アフリカ局中近東第二課地域調整官、在ドバイ総領事を歴任し、2003年駐リビア特命全権大使、06年退官。その後、公益財団法人中東調査会で常任理事、副理事長・業務執行理事を務め、13年から同調査会参与。(撮影:尾形文繁)

1月7日、預言者ムハンマドを風刺した週刊紙「シャルリ・エブド」の編集部が襲撃され、事件はユダヤ系商店の襲撃などに発展した。11日には、事件に抗議し「表現の自由」を掲げるデモ行進が、フランス全土で約370万人が参加して行われた。一方、「シャルリ」紙が最新刊でムハンマドの風刺画の掲載を繰り返したことで、イスラーム社会にはこれを批判するデモや抗議集会が広がっている。約40年間、アラブ・イスラーム世界に関わってきた、塩尻宏・元駐リビア大使に話を聞いた。

風刺というよりももっぱら誹謗中傷、侮辱

――フランスではテロ反対と「表現の自由」を掲げたデモ行進が行われた一方で、イスラーム社会では「シャルリ・エブド」紙に反発するデモや抗議集会が広がっています。

言論の自由に暴力で対抗し、あまつさえ殺人までする行為は、もちろん許されることではありません。とはいえ、インターネットで検索してみると、「シャルリ・エブド」紙が掲載した中には風刺画のレベルにとどまらず、誰が見ても度を超えて屈辱的な誹謗中傷や嘲笑と受け取られるものが少なくありません。

日常生活において自然な形で宗教的実践を行なっているイスラーム教徒にとっては、預言者ムハンマドの人格や尊厳が穢されたり、イスラーム教徒やイスラーム教そのものが誹謗中傷されることは、彼らの存在が否定されたと同じです。「表現の自由」とは言え、社会に身を置く人としての節度の上限を越えた言動は、イスラーム教徒のみならずいずれの人の感情をも逆なでする行為といえます。

「シャルリ・エブド」紙が2006年に掲載した風刺画の中には、黒い長衣をまとった預言者ムハンマドが描かれ、“MOHAMET DEBORDÉ PAR LES INTEGRISTES(モハメットは原理主義者たちに辟易している)”と説明されたものがあります。彼は手で顔を覆いながら“C’EST DUR D’ETRE AIMÉ PAR DES CONS…(間抜けどもに愛されるのはつらい…)”と嘆いています。仏和辞典で調べてみると、フランス語の“CON”は、「ばか」や「間抜け」などの意味にも使われますが、本来は「女性器」を指す単語です。

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