東京ガスとパナソニックが家庭用燃料電池「エネファーム」第2世代機発売へ、約3割値下げで「普及期の入り口」に
東京ガスとパナソニック<6752>は、家庭用燃料電池システム「エネファーム」の新型機を4月から発売する。基幹部品を小型化、かつ発電効率を高めることで、現行機種よりも約70万円価格を引き下げる。また、設置に必要な面積も最大で半分程度に削減し、設置場所の制約の多い首都圏の戸建て住宅への普及を図る、
エネファームは、都市ガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて発電、電気として家庭内で利用する一方、その際に出る熱で温水をつくり、給湯や暖房にも利用する仕組み。東京ガスとパナソニックが共同で1999年ごろから開発に着手し、09年から一般販売を開始している。
このシステムは発電ロスがなく、熱を無駄なく活用できるという点で環境への負荷が低いことが特徴だが、一方で一台当たりの設置コストが補助金を前提にしても200万円弱と高い点が普及上のネック。製造元のパナソニックからの出荷台数は累計約5000台。うち東京ガスが累計4000台を販売するにとどまっている。
新型機は、ガスのエネルギーを電力に変換する発電効率を現行の37%から40%に高める一方、発電を行う燃料電池ユニットのシステムの簡素化や「スタック」といわれる基幹部品の小型化に成功。希望小売価格で276万円(税込み、工事費別)という設定が可能になった。補助金を受ければ自己負担は130万~150万円程度になるという。「これまでの導入期に続き、普及期の入り口に立ったという位置づけ」(東京ガスの小林裕明・執行役員燃料電池事業推進部長)だ。
パナソニックでは、来2011年度中に新型機を今10年度見通しの2倍となる年間6000台以上の生産体制を構築、東京ガスは今期の2倍の5000台を来期の目標として掲げている。
ただ、価格は下がったとはいえ、新型機の場合でも初期投資コストを(光熱費削減といった)運用コストで回収するには15~16年が必要だという。耐用年数として設定されている10年以内の回収はまだ難しいことになる。東京ガスでは、「今後2年ぐらいのうちに年間1万台のオーダーに乗せたい」としており、そのためにも「家庭の自己負担が100万円を切るレベルに早くもっていきたい」(同)という。
引き続き低価格化の実現を目指す、という点では両社のベクトルは一致しているが、コストダウンにはさらなる生産量の拡大が必要という「ニワトリと卵の関係」(パナソニックの岩佐隆司・ホームアプライアンス社燃料電池プロジェクト技術グループマネジャー)だ。
パナソニックでは、東京ガス以外にも大阪ガスなどの新規販売先の開拓を併行して進めている。また、自動車用など他用途の燃料電池の需要が増えれば、スタックの製造コスト低減につながるため、燃料電池全体の市場がどれだけ拡大するかも、エネファームの普及価格実現のための重要なファクターとなりそうだ。
■写真:東京ガス・小林裕明氏(右)、パナソニック・岩佐隆司氏
(勝木 奈美子 =東洋経済オンライン)