「街づくりにはパン屋が最強」と言える7つの理由 日本における最強コンテンツをどう生かすか

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その結果、嶋田氏の店、神田川ベーカリーはビル1階にショーウィンドーがあり、客は外からパンを選ぶという、昔のたばこ屋さんのような店構えになった。不利な建物を使って雰囲気のいい店を作るのにはパン屋が有利というわけで、これが2つ目の理由である。

住宅街の中ではこの方式は意外に便利でもある。ペットや子ども連れ、ベビーカーを押した人の場合、店内に入りにくいことがあるからだ。コロナ禍では非接触で安心という声もあったという。

ちなみに雰囲気のいい店という意味では花屋や雑貨店なども考えられるが、花を並べるにはパン以上のスペースがいることが多く、雑貨は手に取ってみたいもの。そう考えるとパンは狭い場所で売るのにも向いた商品なのだろう。

商圏はけっして広くなくても大丈夫

ペットや子ども連れの客が多いことを考えると、パン屋の商圏はそれほど広くはない。毎日食べるものと考えるとたまに都心の有名店などに買いに行くとしても普段はご近所で買う商品の1つであり、嶋田氏は歩いて、あるいは自転車で10分圏を想定している。

まちの活性化を図るリノベーションまちづくりに関わってきた建築家の嶋田洋平氏(写真:筆者撮影)

これは再開発以外の手法でまちづくりを考える際には中心になる範囲である。つまり、周囲に愛されるパン屋さんを作り、そこへの日常的な人の流れが生まれることはそれだけでまちに寄与する。これが3つ目の理由だ。

それなのに実はまちのパン屋さんは減っている。パンブームと言われる中、2020年に帝国データバンクの調査で2019年に廃業したパン屋が過去最多を更新したことがニュースになった。特に小規模なまちのパン屋の倒産が目立ち、その背景には店主の高齢化や、材料や人件費の高騰、コンビニとの競争の激化などがあると言われる。

高額食パンが話題になり、パンのイベントが多くの人を集めるなど、食べる側の舌は肥え、美味しいものにならお金を出す人もいるのにパン屋は足りていない。パン屋不毛地帯も増えているわけで、パン屋には参入の余地があるのが4つ目の理由である。

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