米最高裁が「中絶の権利」覆すことで起きる事態 アメリカでは中絶事態が違法になってしまう?

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生殖関連のヘルスケアを専門とする研究機関、グートマーカー研究所の見立てでは、中絶を受ける権利に著しい制限を設けるとみられる州は26州と、上のリストとはやや異なる。ノースカロライナとペンシルベニアが除外される一方、フロリダ、アイオワ、モンタナが入ってくる。

ロー判決が覆り次第、中絶を違法とするトリガー法を持っている州は13。ロー判決で無効化された古い中絶禁止法を残している州もあり、ロー判決が覆ると、これらの中絶禁止法が再度有効な法律として施行される可能性がある。さらにオクラホマのように、ロー判決の判例にも関わらず、少し前に中絶禁止法を成立させた州もある。

州を超えた中絶が増える可能性

Q. 中絶件数はどう変わるのか?

A. 中絶を求める女性は、合法な州で手術を受けたり、オンラインで国外から中絶薬を取り寄せたりするなど、別の手段をとることも可能だ。参考になるのが、テキサス州の状況だ。

同州では昨年9月、胎児の心拍が確認できるようになる妊娠約6週目以降の中絶を禁じる州法が発効。テキサスのクリニックにおける中絶手術数は半減した。ただ、多くの女性が近隣の州で手術を受けたり中絶薬を入手したりできたため、全体的な中絶件数の減少は約10%にとどまった。

ロー判決が覆れば、中絶件数は減少するだろう。中絶が合法な州まで一段と長距離の移動を余儀なくされるからだ。中絶を受ける女性の多くは貧しく、遠距離移動は超えられないハードルとなりうる。

中絶が禁止される可能性が高い州は南部、中西部、グレートプレーンズ(大平原)地域に集中している。州を超えた受診の増加が想定されるため、残されたクリニックでも遠方から訪れた患者の受け入れ能力が不足するのは、ほぼ間違いない。

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