円安で「株が上がる業種」「下がる業種」はどれか 今後は株価の二極化が進行する可能性もある

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ところで、この黒田バズーカですが、2012年12月からの安倍政権で掲げられた経済政策、アベノミクスで提唱された“大胆な金融政策”を実践するものでした。その主な目的の1つが円安誘導です。円安による輸出価格競争力を改善させることで、ハイテク電子部品や高機能部材、また自動車などの産業の輸出増加を促し、景気回復を期待するものでした。

輸出価格競争力を簡単に説明すると次のようになります。例えば、100円のボールペンを輸出するとしましょう。1ドル=100円だったら、1ドルで売ることになります。これが円安で1ドル=200円になったらどうでしょう。半分の0.5ドルが100円と同じ価値ですから、0.5ドルで売れば日本円ベースで100円を得ることができるわけです。円安になれば、その分ドルベースで安い値段で売っても円ベースで得られるお金は同じなのです。

一方、輸入の場合にはどうなるでしょう。1ドルのボールペンを輸入するとして、1ドル=100円だったら100円で買うことができます。しかし1ドル=200円になったら200円が必要です。円安になると、海外からモノを買う時には、円ベースでは、より多くのお金が必要となるのです。

円安時にGDPはどうなる?

日本の景気の動きを捉えるには様々な方法がありますが、GDP(国内総生産)の動きで捉えることが一般的です。GDPが増えると景気が回復、GDPが減ると景気が減速という見方をします。ここで支出面からこのGDPを計算するケースを考えましょう。GDPの計算には輸出金額が足されて、輸入金額は差し引かれます。

つまり輸出が増えればGDPも増えて、輸入が増えるとGDPは減ることになります。ここで円安時の輸入について考えて見ましょう。円安前と同じモノを同じ数量分、輸入するとしたらどうでしょうか。輸入なので価格(値段)はドルで決まりますから、先ほどの1ドルのボールペンの輸入の例からイメージできるように、輸入するために(海外からモノを買うために)、円ベースでは円安前より多くのお金が必要となります。円安場面では輸入が増えるためGDPは減少(景気は減速)するのです。

こうした“円安→景気減速”の関係を反映して“円安→株安”の傾向も確認できます。図表2は円ドルレートと日経平均株価の推移を見たものです。

2017年以降は円ドルレートと日経平均株価が逆連動の動きとなっており、青グラフが低下(円高)で日経平均株価が上昇。一方、直近にかけては円安で日経平均株価が下落となっています。つまり“円安→株安”です。

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