BS局が地上波と一味違う「報道番組」売りにする訳 当事者、専門家の声をじっくり聞けるスタイル

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(画像提供:GALAC編集部)

スタジオを取材現場にする──地上波の常識では絵空事で終わってしまいそうな言葉だが、この番組では現実化した。ニュースや話題の当事者たちの口から、新たなニュースが次々と飛び出した。キャスターで番組編集長の反町理氏が根掘り葉掘り聞くからだ。

2022年1月31日放送ではゲストの立憲民主党・泉健太代表が日本共産党との関係について、「次の総選挙や参院選でこれまでの連携は白紙にする」と発言。これに共産党が猛反発し、新聞各紙が記事にした。

政治部記者出身でフジテレビ解説委員長も兼ねる反町氏は、メモを取りながら急所を突いた質問を投げかける。確かにまるで取材だ。

当事者や関係者にスタジオでじっくり話を聞くスタイルは後発のBS報道番組にも影響を与え、ほとんどの番組が踏襲している。失言を恐れて尻込みする出演者はいないという。むしろ地上波のニュース・情報番組と違って編集がないことが歓迎されているそうだ。

バーサス構造は避け、舌戦を売り物にしない

ほかにも地上波の討論番組と違う点がある。ゲスト同士のバーサス(対決)構造を避け、舌戦を売り物にしないところだ。

「例えば安全保障などをテーマにする際、与野党の国会議員を同じ日にしないことがあります。与党の議員に来ていただいたら、野党の議員は別の日に来てもらいます」(上野氏)

ウクライナ侵攻問題をテーマにした同3月1日の放送では、駐日ウクライナ特命全権大使のセルギー・コルスンスキー氏をゲストに招いた。翌2日の放送では駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏が登場した。2人の大使を同じ日に登場させたら、ショーの色合いが強くなってしまっただろう。バーサス構造にしないので、視聴者はゲストの話をじっくりと聞ける。

「これまでの14年でスタジオが険悪なムードになったことはほとんどありませんが、それもバーサス構造にしないようにしているから。何に対しても中立であろうとする反町氏の力も大きい」(上野氏)

後発のBS報道番組も舌戦を目玉にしていない。50代以上の視聴者が多いBSは刺激を求めている人が少ないと見られ、合っていた。後発番組が次々と生まれたことについて上野氏は「僕は良いことだと思っている」と言い切る。確かに「ニュースを詳しく知るならBS」という認識が深まり、BS自体の存在感も強まった。

次ページ次はBS-TBS「報道1930」の松原耕二氏に聞いた
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