(第51回)大学キャンパスは20年後の世界の姿

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 この議論は少々乱暴と思われるかもしれない。しかし、大いにありうることだ。今後20年間、日本の経済が停滞し(それは大いにありうる)、中国が年率8・5%の経済成長率を維持できれば、20年後のGDPはほぼ5倍になる。

このことは、IMF(国際通貨基金)のWEO(世界経済見通し)によっても確かめられる。この見通しは15年の中国の実質GDPが、10年の1・57倍になるとしている。これは年率では9・5%強の成長である。もしこの成長が続けば、20年後には6・1倍になる。

他方で、日本は同じ期間9・2%の成長にとどまる。これは年率で約1・8%強の成長であり、20年後は1・43倍である。したがって中国のGDPは日本の4・3倍になるわけだ。

中国のGDPが日本の5倍になれば、さまざまなことが質的に変化する。たとえば中国の1人当たりGDPが日本の5割になれば、多数の高額所得者が中国に現れる。具体的な数字は、所得分布がどうなっているかによるが、次のように推察される。

本連載の第28回に示した日本の07年の世帯所得分布では、上位10%世帯の所得は1100万円以上であり、これは平均所得556万円の約2倍だ。本連載第49回で示したアジア諸国のデータでも、上位10%世帯の所得は平均所得の2倍程度から上であろうと推察される。

仮に20年後の中国の所得分布が同じ形であれば、日本人の総人口と同じ数の中国人が、日本の平均所得(=中国の平均所得の2倍)を超える所得者になる。このように、20年後の日中の相対関係は、今の感覚では想像もつかないほど変化するのだ。

中国の質的成長を無視して日本の将来は語れない

ここに述べたことは、日本の将来を考える場合に極めて重要だ。なぜならわれわれは、中国が今後も量的に成長することは予測しているが、それが質的な変化を伴うことを十分に認識していないからだ。

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