ジャック・アタリ 経済学者、元欧州復興開発銀行総裁--日本は無策のままならば5年以内に財政破綻する

拡大
縮小


 日本も1993~95年にかけて危機が起きた段階で解決に乗り出していれば、2008~09年にあれほどの危機には遭わなかったでしょう。90年代に対策を講じなかったことで、ショックが増幅されました。

日本は米国やフランスにない少子高齢化の問題も抱えています。日本がこのまま手を打たないと、おそらく10年を待たずに破綻するでしょう。やがて貯蓄だけでは公的債務を賄い切れなくなる。産業向けの投資もなく、資本流入を促すには金利が上がらなければならない。そうした過程を経て危機が深刻化します。

破綻に陥るまでの期間は向こう5年以内。だが、5年以内に起きるのが不可避の事象であると予測できた場合、実際には2年以内に起きる。それが歴史の教えるところです。

この危機の深化を回避するためには、人口問題に関する長期的視点からの政策を導入すべきです。さらに、研究開発を一段と推し進め、世界一の研究開発大国にならなければならない。結果として、将来を担う産業分野でナンバーワンになりえるかもしれません。それは日本にとって大きな宝になります。

並行して少なくとも向こう3年は歳出を大幅に削減しなければなりません。年率10%台のカットです。同時に税金を増やさなければならないのは論をまたないところ。むろん、消費税も含めてです。

増税は3年をタイムリミットに実行。いったん結果を見たうえで、維持あるいは存続の是非を検討する。こうしたプロセスを実施に移せば、債務危機を乗り越えられます。しかし、毎年のように首相が代わり、改革に着手しない状態が続けば、「腹切り」せざるをえないでしょう。

「島国は閉鎖的」という考えは間違っている

--近著『国家債務危機』では、フランスが危機を脱出するには外国人受け入れのための投資が必要、と主張しています。日本も同様の対策を講じるべき、と唱えていると聞きました。

人口問題に関しては各国が望ましい解決策を見いだせばいい。とても深く、政治的かつ哲学的なものですから。

日本も人口増加のための措置をあえて取らず、6000万~7000万人程度で推移させることもできるでしょう。だが、そのツケはいずれ回ってきます。高齢化は一段と顕著になってしまいます。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT