悪い金利上昇リスクと日本破綻のシナリオ

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社会保障改革なしでは悪い金利上昇を招く

日本が経常赤字に転落する時期がいつなのかは、エコノミストによって見方が分かれる。貿易収支は減るものの、所得収支がなかなか減らず10年は先、という見方が多い。が、その兆しが見えたときには、財政危機への懸念は一気に高まる。

デフレ下でゼロ金利政策が長期化したため、利払い費は2005年までは低下してきた。しかし、その効果は一巡し、利払い費はボトムアウトしている(下図)。消費税率を上げるだけでなく、膨らむ社会保障費を見直さなければ、財政赤字は改善しない。公債残高が増え続ければ、利払い費も増えていく。

いま、最もリスクとして実現可能性が高いのはS&P同様、市場参加者の多くが、政府は税や社会保障の改革を実現できないと考えることだ。それにより悪い金利上昇が起これば、信認は崩壊し、それがさらに金利を上昇させる悪循環となる。前出の大橋氏は「人々の『期待』が、何をきっかけに変化するのか、すべてを予測することは難しい」という。「信認が失われると同時に企業や個人が国籍を変え、資金だけでなく人も流出するような事態にまで発展すれば、徴税力が低下する」。

安定性を欠いた政治状況の中で、不気味なシナリオが実現する確率は一段と高まっている。


(大崎明子 =週刊東洋経済2011年2月12日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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