北海道新幹線、道民は「延伸」にどんな未来描くか 開発ラッシュに沸く現地、一方で「負の影響」も

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地元の人々に尋ねると、札幌市中心部で進む都市改造は、北海道新幹線延伸がひとつの契機になっているとみられる。どの範囲までが延伸と連動しているのか明確でないが、この動きを開業に先駆けての「効果」と位置づけることもできる。

2031年春に北海道新幹線延伸を控える札幌駅=2022年4月(筆者撮影)

ただし、それを上回りかねない「負の影響」として顕在化したのが、函館本線の部分的な廃止決定だ。かねて存続が危ぶまれていた並行在来線の函館本線、いわゆる「山線」のうち、長万部―余市間について、沿線7町は2022年2月に廃止を容認した。さらに翌月、余市―小樽間について、最後まで鉄路の維持を訴えていた余市町が廃止を受け入れ、長万部―小樽間の廃止が実質的に決まった。

全道的に鉄路の存廃が論じられる中、この廃止方針が地元にとってどの程度の重みを持つのか、道外の人間には容易に推し量れない。ただ、ネガティブな影響を受ける人々は確実に生まれつつある。札幌市では、札樽トンネルの工事に伴って排出される、重金属を含む「対策土」の処理が社会問題化している。着工認可時には話題に上っていなかったという。これらに限らず、北海道新幹線の建設と延伸が今後、どのような正負の波を全道に及ぼすのか、注視していく必要性を感じる。

新幹線ネットワークの到達点

新幹線はもともと、東京を起点とする「太平洋ベルト地帯」に適合させるために構想された高規格・高速鉄道だ。人口が稠密で、一定規模の都市が列状につながる地域は、それでなくても鉄道と相性がよい。

この付近から東(右手)へ新幹線駅とホームが建設される=2022年4月(筆者撮影)

東北・北海道新幹線沿線の政令指定都市は仙台と札幌に限られる。 東北新幹線は当初、極端な「需要先細り型」の予測により、終点は仙台が想定されていた。

しかし、盛岡まで終点が延ばされて1982年に開業し、東北の北緯40度以南を一変させた。7年後の1989年、仙台は人口約90万人の政令市となった。

その後、上越新幹線の開業(1982年11月)を挟んで、東北新幹線・八戸開業(2002年12月)、九州新幹線・新八代―鹿児島中央間開業(2004年3月)、東北新幹線・新青森開業(2010年12月)、九州新幹線全線開業(2011年3月)、北陸新幹線・金沢開業(2015年3月)、北海道新幹線・新函館北斗開業(2016年3月)と、新幹線ネットワークは延びてきた。

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