線路の幅38cm、「超ミニ鉄道」がつなぐ日英の縁 伊豆「虹の郷」と本家英国の「ロムニー鉄道」

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「速度はさほど出ないだろう」と高をくくっていたが、並行する国道を走るクルマと負けないほどの“高速”で走る。直線区間で線路の状態がよければ「最高時速は80km近く出せる」というから驚きだ。駅舎やポイントを切り替えるシグナルルームは古き良き英国のローカル鉄道さながらの雰囲気。始発駅のハイス(Hythe)駅には転車台もあり、「小さいのによくぞここまで造り込まれた」と感心することしきりだった。

筆者がやはり気になったのは、虹の郷と英国の「15インチゲージ鉄道」がどうつながっているかということだった。

英国RHDRの12号機関車。日本のロムニー鉄道を走る「ジョン・サウスランドⅡ」と同型で同じ工場で造られた(筆者撮影)

これについて、RHDRは来訪者向けの案内パンフレットにユニークな書き方で日本との関係を表現している。いわく、「RHDRには13号機関車がありません。ここに来るはずだった機関車が日本に行ったからです」とある。実際に、RHDRの13号となる予定だったディーゼル機関車は虹の郷へお輿入れした「ジョン・サウスランドⅡ」(1988年製)だ。なお、RHDRにも同じ工場で作られた同型の12号機「ジョン・サウスランド」(現名称はJ.B.スネル)がある。

「超ナローゲージ」の奥深さ

ただ残念なことに、RHDRで何人かのスタッフに聞き回ったものの、その13号機関車が日本のどこへ行ったのかを誰も把握していなかった。公式資料をじっくり読み込めばわかりそうなものなのに、情報として共有されていないことに口惜しさを感じた。

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筆者は日英の「15インチゲージの鉄道」に触れ、その特徴である「小ささ」をまるで感じなかったことが驚きだった。本場英国では意外なほど高速で走る機関車や、小さいながらも軽自動車と比べれば十分に広い客車など、しっかりした乗り物であることに、英国の「超ナローゲージ」の奥深さを感じずにはいられなかった。

虹の郷の「ロムニー鉄道」は用途的にも免許的にも実用の鉄道ではなく、あくまで「観光施設のアトラクション」だ。しかし、その姿は「正統派英国鉄道の歴史的系譜を受け継いだ日本で唯一の鉄道」と言っても過言ではない。伊豆の山中にある知る人ぞ知る由緒ある鉄道資源、そして英国の15インチゲージ鉄道が多くの人々に知られることを期待してやまない。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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