愛知県知事、名古屋市長選大敗にみる菅政権の「鈍感さ」

愛知県知事、名古屋市長選大敗にみる菅政権の「鈍感さ」

塩田潮

 6日の愛知県知事、名古屋市長の選挙で民主党は大敗を喫した。統一地方選を控えて手痛い敗北だが、「民主党王国」の愛知での敗退は、民主党政権の民意への鈍感さ、闘う姿勢の欠如も原因の一つだろう。

 2009年の政権交代は、自民党への失望も大きかったが、風と波が頼りで「民意の党」の民主党の「闘う姿勢」への期待が背景にあった。なのに、政権獲得後、当面の政権運営に追われて、民意よりも永田町と霞が関に目が向き、「闘う」よりも「こなす」で手一杯の印象だ。

 菅首相の口から出た1月28日の「疎い」発言も、民意軽視、闘う姿勢の欠如と映り、それが尾を引いて愛知の選挙にも響いたのではないか。

 アメリカの格付け会社による日本国債の格下げについて質問を受け、「そういうことに疎い」と答えた菅首相は、「格付けに詳しくないということではない」「情報が入っていなかったということ」と釈明に躍起になった。消費税増税を唱える首相が格付けなどの国債の問題に不案内とは思いたくないが、「疎い」という言葉から、国民と共有すべき危機感や問題意識の希薄さだけでなく、財政問題でも本気で闘う気がないのでは、と受け止めた人は多かったに違いない。

 それ以上に懸念されるのは、実は首相は勉強不足で本当にこの問題に疎いのかもしれないと疑いを抱く国民が増大することだ。だから、失言は恐い。

  野党時代も含め、菅首相は「失言三首相」といわれる「無党派層は寝ててほしい」の森元首相、「みぞうゆう」の麻生元首相、「私は愚かな首相」の鳩山前首相と比べて、舌禍は多くはなかった。野党時代は攻撃力が売りで、相手方の失言や放言を誘い出す側だったから、自身の言葉が問題になることは少なかった。

 だが、攻撃型の菅首相が、民意に鈍感になり、闘う姿勢をなくせば、中身が乏しい「空き菅」の顔が見えてくる。現状の変革を願う国民の期待に応えて闘い続けるという道を進まなければ、早晩、失言、漫言、空言の連鎖が生じ、墓穴を掘りかねない。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
最強コスパで選ぶ保険

保険料というコスト、保障というパフォーマンス。2つのバランスを考えたコストパフォーマンス・ランキングでわかる最強の保険選び。注目の新商品から保険見直しの裏技まで紹介。