「カムカム」で注目、岡山学生服がシェア7割の訳 原宿にショップ、オーディションでモデル選出

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こうして岡山県が日本を代表する学生服の製造拠点となったわけだ。学生向けの制服が詰襟、セーラー服というのは筆者の世代の感覚で、1980年代にはブレザー型が浸透し、カラーバリエーションも豊富となり、平成以降は、一流デザイナーが手がけるDCブランドが登場する。森英恵、山本寛斎、コシノ・ヒロコといった錚々たるデザイナーがかかわってくるようになった。

最近の傾向はどうだろうか。まず、機能面の進化だ。型崩れしにくい縫製、シワになりにくい素材の使用により、家庭の全自動洗濯機で丸洗いできるタイプが登場している。夜洗って朝着られる速乾性も備えているというから便利になったものだ。

ジェンダーレス化も顕著だ。多様性に対する学校制服の取り組みが進むなか、女子向けのスラックススタイル採用、男女同デザインのブルゾン風ジャケットなど選択肢が豊富になってきている。学校向けにLGBTQ講演会を行っている企業もある。

制服に再生原料を使用

また、大手素材メーカーは今年4月から、都内の私立高校の協力を得て「循環型学生服」の実証実験を開始すると発表した。卒業生から制服を回収し、再生原料を使用した制服を生徒が着用するという構図だ。

ウール混の衣類を回収してのリサイクルはこれまでもあったが、再生後の用途はカーシートなどの産業資材がほとんどだった。解きほぐした原料を用いて衣類用の細い糸を紡出することが困難だったからだ。しかし、長年の研究により、試作段階では通常品とほとんど変わらない外観と品質の再現に成功、今回の実証実験につながったという。

ユニークな試みもある。菅公学生服が2018年に東京・原宿にオープンした「カンコーショップ原宿セレクトスクエア」。同社が扱うセレクト制服(学校指定外の自由アイテムや学校制服のない生徒向けの制服)のショップで、オンライン販売やレンタルサービスの拠点でもある。商品開発からモデル、PR活動まで行う中高生メンバーで構成される「カンコー委員会」は、メンバーの選出をオーディションで行う。今年の第5期生には12名が選ばれた。ちょっとしたアイドルである。

特産品としての顔もある。トンボの学生服は玉野市のふるさと納税の返礼品になっているのだ。「ジョニーアルバートW30 上着」は寄付額4万9000円、「ミッドフィルダースラックス」は寄付額2万円となっている。

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