デロイト

未来に向けて「しなやかな組織」を築く
組織の創造性を高める4つのキーワード 近藤 泰彦(デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー)
× 後藤 将史(デロイト トーマツ コンサルティング パートナー)

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世界で勝てる戦略を持つことに加えて、それを実現する強い組織を育てることも、最も重要な経営課題の1つである。ここではさまざまな事例を読み解き、未来視点で創造性あふれるイノベーティブな組織を築くためのポイントを4つのキーワードから考える。

この先の競争を勝ち抜くために何が必要か

オリンピックイヤーである2020年、そして、その先を見据えたとき、現在と同じようなポジションを保って生き残っている日本企業がどの程度あるだろうか。

手をこまねいていれば、大半の日本企業が今よりも苦しい立場に追い込まれ、悪くすれば消滅していても不思議はない。革新的なビジネスモデルで一変する業界構造、機動的で野心にあふれた新興企業の台頭など、経営環境は厳しさを増しているからだ。たとえば、世界の企業ランキングとして有名なFortune 500 を見ても、新興企業の躍進に押され、この10年の間に日本企業の存在感は急速に薄れてきている(図表1、2)。

 

では、将来にわたって生き残り、競争に勝ち抜ける「強い組織」をつくるためには、今何をするべきか。

その答えは大きく2つある。1つは、権限や責任、規則や制度によって規律を高める「ハード面の強化」である。もう1つは、メンバーの動機付けや創造力の解放、つながりによって活力を生む「ソフトパワーの活性化」である。

「ソフトパワーの活性化」こそが勝負を決める

1つ目の方向性である「ハード面の強化」とは何か。これは世界中に事業展開が進むなか、グループ・グローバル全体であらためて責任や権限を明確にし、組織全体の効率性を高め、必要な機能を再配置することを意味する。これには、組織設計にあわせた経営管理や人事制度の見直し、ITインフラの整備なども含まれる。

後藤 将史(ごとう・まさし)
グローバル経営における組織面でのトレンドに関する研究に従事する。食品・飲料、電子部品などの製造業企業を中心に、内外での成長戦略の立案とグローバル化に向けた組織改革への支援も数多く手掛けている。著書に『グローバルで勝てる組織をつくる7つの鍵』(東洋経済新報社)がある。グローバルマネジメント インスティテュート(GMI)パートナー。

もう1つの方向性である「ソフトパワーの活性化」は、企業を構成するチームやメンバーの個性やアイディア、専門性を活かし、モチベーションを高めてコミュニケーションやつながりを円滑にする改革を指す。この改革により、組織を活性化し、創造性やイノベーションを起こす力を高めることをねらうのである。

前者のようなグローバルでの組織・管理体制の再構築は、昨今、多くの日本企業がその重要性に気づき、取り組みを始めている。しかし、新たな制度づくりに真面目に取り組むあまり、単に管理を厳しくするだけの結果となり、むしろ官僚化が進み成果にはつながっていないことも多い。組織という形をつくっても、それだけではそのなかで活躍すべき個人が輝くことはない。

一方で、もう1つの方向性である「ソフトパワーの活性化」についてはどうか。デロイトでは、世界中の企業を対象にヒューマン・キャピタルに関する継続的な調査を実施しているが、その結果を見ると、組織メンバーの動機付けや疲弊する従業員への対応に課題認識を持っている企業は多い。しかしながら、それを企業の創造性やイノベーションを起こす力に直結した課題と捉え、あらゆるテーマのなかの最優先事項として、創造性こそを自社の圧倒的な強みとすべく取り組む企業は少ないのではないだろうか。

今、競争の焦点は「モノからコト」へと移り変わっている。デジタル革命が進み、社会課題への意識が世界的に高まるなか、競争の土俵はもはやコスト・品質・効率だけではない。ビジネスモデル自体の革新性、製品デザインやストーリー性、消費者の感動体験、社会的価値などがますます重視される。さらに、デロイトのメタトレンドでも触れているとおり、3Dプリンターや自動運転などの技術革新、ナノテクノロジーを駆使したまったく新しい製品やサービスの出現など、非連続的な変化がこの先も起こり続ける。

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