年収500万の31歳彼が「タイの田舎」で超幸せな訳 「レールの敷かれた人生」から逃げ続けた結末

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『この1冊でここが変わった』みたいな、単純かつ劇的なものはないのですが、あえて1冊あげるならドイツの思想家、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』はかなり感銘を受けましたね」

東南アジアで働きながら、読書を通じ、人生を考える……自分探しの極地とも言えそうな行動だが、居住地がタイの田舎に落ち着いたのは、こんな理由だったという。

「妻と結婚し、腰を据えようと思ったのがきっかけです。妻と出会ったのは3年ほど前のことで、場所は語学交流サイトでした。田舎のタイ人男性って基本的にそんな働いていないので、日本人に限らず外国人男性のウケが良いらしくて。日本人の20代で英語ができて、なおかつ、しっかりプロフを書けば、普通に月200人ぐらいは現地の女性からメッセージが届くんです。

しかも、この辺りはまともに働いている男性が少なく、月に40万円稼ぐ自分はかなりの高収入。だから、正直これは妻に内緒なのですが、妻にアプローチするのは正直全然大変じゃなく、むしろ簡単で(笑)。

今、自分の生活を『何か問題あるの?』という目で見たら、なんの不満もありません。だから、QLCも、気づいたら抜けていた感じですね」

「レール上の生き方に満足」し感じたこと

こうして、20代前半の女性を妻として迎えた牧田さん。場所やお金に縛られず、「人生とは?」「幸せとは?」「働く意味って何?」と考え続けた彼が、自らの居場所を、まさかタイの田舎でこうもあっさり見出すとは。

「妻と出会うまで、自分は女性としっかり付き合ったことがありませんでした。また、学生時代の自分は『大学卒業→就職→結婚』という、レールのような生き方に違和感があり、ずっと逃げまくってきた。

でも、タイの田舎まで逃げても、結局は逃げられなくて、そのレール上の生き方に満足している。

だから、今思えば、自分は社会から圧を受けていただけだったんだなと思うんです。結婚して、月収もそれなりにある一般的な幸せラインに乗ることができれば、プレッシャーもなくなったので」

もし日本の若者たちも、月に40万円ほど会社からもらえ、今より余裕のある生き方ができるようになれば、人生に悩むことも減るのでは……。

波乱万丈な牧田さんの人生を聞いたあとで筆者の胸に浮かんだのは、そんな悲しい仮説であった。

本連載では、お話を聞かせていただける「クォーター・ライフ・クライシス」(QLC)を経験した方を募集しています。アラサーの筆者・編集者がインタビューさせていただきます。ご応募はこちらのフォームからお願いします。
伊藤 綾 フリーライター

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いとう・りょう / RYO ITO

1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュースなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii

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