誰が世界をデザインするのか? 世界情勢は予想外の混沌へ《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》

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2011年の世界体制を占うといわれた年明け早々のワシントンでの米中サミットは「何も起こらないことが双方の最大の望み」であるかのごとく、穏やかに終了した。ホワイトハウスは近代の中で最も重要な首脳会談と位置づけていた。昨年のような、圧力の掛け合いや対立の演出は一切見られなかった。
 
 上院多数党の院内総務であるハリー・リード議員がサミット直前に、「胡錦濤は独裁者」と騒いだが、これは政局目当てにすぎない。ホワイトハウスの対応は冷静で、中国も大人の対応で相手にしなかった。直後にリード議員は謝罪した。

昨年末から、世界における最大の懸念の1つといわれた北朝鮮情勢についても、一定の進展があった。両国は共同声明で、北朝鮮のウラン濃縮活動について「共通の懸念」を表明した。中国政府は、北朝鮮の核開発疑惑が明らかになって以来初めてその懸念を明示した。

米国は内政に大きな課題を抱えている。中国は12年の指導者交代を、安定した米中関係の中で迎えたいとの思いが強い。お互いがお互いのリーダーシップの限界を認識して現実的な対応を始めたのだ。

ぬか喜びで始まったダボス会議

金融危機後の新たな国際秩序のデザインで最も大きな影響力を持つ米中サミットが穏便に終わったことで、世界中のリーダーや識者は安堵した。これで、続いて開催されるダボス会議で「欧州財政問題」にこれで集中できると思っていた。そこではカギを握るドイツのメルケル首相によるユーロ体制堅持への決意が表明される見込みであった。世界のリーダー・識者は今年の世界経済に明るい展望を持ち始めた。

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