インドは中国と並ぶ大国になれるのか? ハーバード大学教授 ジョセフ・S・ナイ

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インドの弱点は大学教育にあり

過去何十年にもわたって、インドは成長率が1%を若干上回る程度の“ヒンズー的成長率”から脱することができなかった。47年の独立後、インドは重工業重視の内向きな政策を採ってきた。だが90年代初めに市場志向型改革が実施されてから成長率が上昇し、将来は二ケタ成長になると予想されている。

英フィナンシャル・タイムズ紙のマーティン・ウォルフ記者は、生活水準は低くとも経済が巨大であることから、インドを“未熟児の超大国”と呼んでいる。彼は、インド経済が10年後には英国を追い越し、20年後には日本よりも大きくなると指摘している。インドでは数億人規模の中産階級が生まれ始めており、国民の5000万~1億人が英語を話すことができる。

こうした強みに加えて、インドは大きなハードパワー(軍事力)を持っている。推計で60~70発の核弾頭を保有し、130万人の兵士を擁し、年間の軍事予算は約300億ドル(世界の総軍事費の2%)に上る。

ソフトパワーに関していえば、インドは民主主義国家であり、影響力のあるインド系の人々が世界各国に存在している。世界的に人気なポピュラー文化も有し、“ボリウッド”と呼ばれる映画産業は年間制作本数では世界最大を誇っている。

その一方で、インドは依然として低開発国であり、読み書きのできない極貧の人々が数億人いる。インド人の約3分の1が貧困にあえいでおり、インドは世界の貧困層のほぼ3分の1を占めている。インドのGDPは3・3兆ドルで、米国の20%の水準だ。インドの一人当たり所得は2900ドル(購買力平価)であり、中国の半分、米国の15分の1にすぎない。

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