交通事故を防ぐ、「先進運転支援システム」最前線 踏み間違い事故防止に向けた後付け安全装置

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MCP(モービルアイ・コネクト・プラットフォーム)の概要(筆者撮影)
MCP(モービルアイ・コネクト・プラットフォーム)の概要(筆者撮影)

モービルアイ8コネクトのこうした機能は、メインユニット内に単眼カメラとGセンサー、それに画像認識の頭脳となる高性能のEyeQチップを装備することで実現する。また、SIMカードも搭載することで、OTAによる機能のアップデートが可能なほか、システム搭載車の運行状況をリアルタイムで確認できる車両運行管理システム「MCP(モービルアイ・コネクト・プラットフォーム)」と連携することもできる。

MCP(モービルアイ・コネクト・プラットフォーム)の管理画面(筆者撮影)
MCP(モービルアイ・コネクト・プラットフォーム)の管理画面(筆者撮影)

MCPでは、前方車両への急接近をはじめ、急ハンドルや急発進、急ブレーキなどドライバーの危険な運転習慣も可視化でき、リアルタイムでの運行状況や警報履歴を地図上に表示できるなど、さまざまな機能を持つ。また、安全運転のスコアリングなども可能なため、導入企業はドライバーへの安全運転教育にも役立てることが可能だ。

より手軽かつ手頃に導入できる安全装備の充実がカギ

アイアクセルは一般ユーザー向け、モービルアイ8コネクトは企業向けといった違いはある。だが、例えば、トラックやバス、タクシーなどのドライバーについても、人材不足などもあり高齢化は進んでいる。近年、高齢ドライバーは、認知機能が低下したり、ハンドルやブレーキなどを操作する反応が遅れがちになったりなどの要因で、事故を起こす確率も高くなるといわれている。もちろん、すべての高齢ドライバーに該当するわけではなく、個人差もあるだろうし、あくまで確率の話ではあるのだが……。

衝突被害軽減ブレーキの義務化や、多彩な機能を持つADAS搭載車は、こうした高齢ドライバー問題への対策でもある。だが、公道を走る自動車すべてがそうした先進安全支援システム搭載車に入れ替わるには、まだまだ時間がかかるだろう。しかも最近は、ADASの搭載コストも影響しているのか、新型車の販売価格は上昇傾向だ。安価なイメージの軽自動車ですら200万円を超えるモデルも出てきている。そうなると、一般の高齢ドライバーには、予算的にきびしく、なかなかすぐに買い替えられない人も多いはずだ。また、古いモデルに愛着があって、愛車をずっと乗り続けたいと思っている人もいるだろう。企業にしても、とくに中小の事業者であれば、いきなりすべての営業車を最新モデルに入れ替えることは、コストなどの面でむずしいはずだ。

後付けの先進運転支援システムは、そうした課題解決に貢献する可能性が高いといえる。新型車を購入するよりも安価でADASが導入できるからだ。また、企業の場合は、ドライバーが高齢でなくても、従業員が重大事故を起こせば、業務はもちろん、社会的責任という面でも大きな損失を招くが、こうした後付け装置の導入により、可能な限り安全性を担保できる。よりクルマの安全性を求める時代を反映するアイテムのひとつだけに、今後もさまざまな製品が登場してくることが予想される。

平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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