中小企業に降りかかる為替デリバティブ損失の重圧

「契約を終わらせることしか頭になかった」--。都内のある企業の社長は、昨年の経営破綻の原因ともなった大手銀行との契約を今でも悔やんでいる。

銀行から購入した為替デリバティブ(金融派生商品)がそれだ。「通貨オプション」という契約を結んだ2005年から06年にかけては、1ドル=120円目前と大幅な円安で推移。銀行からの提案で、円安で上昇していた輸入価格のリスクをヘッジするため、銀行から1ドル=110円で毎月一定量の外貨を購入する権利を取得した。

だが、その後の急激な円高で状況は一変する。本来は、円高になれば、権利行使をせずに円高のメリットをそのまま享受できるはず。当時の商品が厄介なのは、企業が外貨を売る権利を銀行に売っていたことだ。そのため、企業は実勢レートより割高な外貨を買い続けなければならなくなった。さらに急激な景気悪化の影響も重なり、事業自体が縮小。預金を崩し、土地を売って外貨購入資金を捻出したが、万策尽きた。

こうした事例は氷山の一角だ。東京商工リサーチによると、10年にデリバティブ損失が関連したとみられる倒産件数は26件に上り、09年の7件から急増。急激な円高で、大手銀行が販売した複雑なデリバティブ商品が中小企業を苦境に追いやっていることが、顕在化している。

契約企業は1万社超

金融庁は昨年末から銀行への聞き取り調査を実施。中小企業のデリバティブ契約社数は1万を超すとみられ、その多くが3メガバンクとの契約という。為替デリバ損失が一因で民事再生法を申請した中小企業の申立代理人である石上晴康弁護士は、「鉄火場に一般企業をまき込んだようなもの。商品性から見て銀行が売るべきものではない」と話す。

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