光通信にも開示違反疑惑が浮上! 京王ズ社内調査で判明した密約の存在

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最終報告書は、この密約が存在しても、創業者やその加担者に対する損害賠償請求権を放棄したのは直接の債権者ではない親会社の光通信であって、債権者である京王ズ自身が放棄したわけではないので、創業者への債権や貸倒引当金をバランスシートに載せたままにしていることは何ら問題はない、と結論付けている。確かに会計処理の妥当性の検証としてはそれで良いかもしれないが、開示体制の面では検証不足であることは否めない。

また、この最終報告書では、昨年2月に京王ズがノジマを引受先とする第三者割当増資の実施を計画したいきさつについて、当時の京王ズ経営陣が、創業者との決別の必要性を感じてホワイトナイトを探していた、としている。

だが、昨年2月に京王ズが公表した第三者割当増資実施に関するリリースのどこを見ても、そういった動機は記載されていない。自らの上位代理店である光通信と手数料の問題でトラブルになり、収益の柱を失いかねないのでスポンサーが必要だといったことしか書かれていない。

昨年2月の開示は虚偽だった?

最終報告書に書かれていることが真実なら、昨年2月の開示は虚偽だったことになり、ここでも開示面での検証はされておらず、東証から開示の体制に問題があるとされている会社の社内調査報告書としては、検証不足であることは否めない。

また、3年前の不正発覚後に就任した二人の社外監査役が、社内調査委の委員を務めているという事情から、監査役の責任の有無について、社内調査委としてはコメントしないとしている。

内部統制の専門家は、「そもそもメンバー構成に問題があるからこうなる。上場維持のための時間的な制約の中で急遽、このメンバーで組成せざるを得なかったということであれば、もはやその制約からは開放されたはず。改めて社内ではなく第三者による検証組織を組成して調査すべき」だと指摘する。

この社内調査報告書は、「光通信は8割近い株式を保有する圧倒的な支配株主なので、光通信が派遣している社外取締役は、社外取締役登用の趣旨には合わなくなっている」として、名実共に社外取締役と呼べる、弁護士や会計士などの専門職による取締役の登用を提案している。

「3度目の正直」となって上場は維持されるのか、或いは「2度あることは3度ある」となってあえなく市場からの退場を余儀なくされるのか。間もなく公表される3度目の改善報告書で、親会社である光通信の覚悟も試されることになるのは間違いないだろう。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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