光通信にも開示違反疑惑が浮上! 京王ズ社内調査で判明した密約の存在

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その3度目の改善報告書提出に向け、光通信による子会社化の後、外部機関を入れて調査を実施した結果、創業者が経営から退いた2012年1月以降も、役員の銀行口座を使って創業者に多額の資金を提供続けるなど、数々の不正行為が継続していたことが発覚した。

2014年12月に急遽組成された社内調査委員会が、外部機関の調査を受けての仕上げとして作成したのが、1月13日夕刻に公表された「最終報告書」だった。

最終報告書には、創業者や創業者の最大の協力者だった元監査役が調査に協力しなかったことや、内々に創業者に資金を流すため、あらゆる手段を使っていたことが縷々書かれている。

だが、最も注目に値するのは、創業者が光通信に保有株を譲渡するにあたり、光通信が代表者名で、創業者との間で、創業者やその加担者への責任追及を行わないことを約束した「確認書」の存在を指摘している点だ。

光通信自身にも開示義務違反疑惑が浮上

この最終報告書は基本的に個人名は全て記号表記になっており、光通信と創業者の間の確認書も、“光通信のAI社長名義でA元社長宛に確認書と標題の付された文書”という表現になっているが、このAⅠ社長が、現在も光通信社長を務める玉村剛史氏であることはまず間違いない。

会社を売り買いする際になにがしかの駆け引きがあったとしても、それが即違法性があるということにはならない。しかし光通信は創業者からの株式取得にあたってTOBを使っている。

「光通信が財務省に提出した公開買付届出書にも、東証で開示したリリースにもこの密約の件は記載がない。従って開示義務違反となり、金融商品取引法や東証の適時開示制度に抵触する可能性がある」と、上場会社の開示ルールに詳しい弁護士は見る。

また、私物化した本人である創業者や、創業者の不正行為に荷担した元取締役や元監査役に対し、京王ズは流出した資金の返還や損害賠償を当然に求めるべきで、それを行わないということは、「特定の株主に裏金を渡す約束をするのといわば同じ。投資家の平等な取り扱い確保を定めた金商法27条の2第3項にも抵触しかねない。一般にTOBを実施するにあたり、法律家がアドバイザーに付かないということはまず考えられないので、法律家がこの合意内容とこの開示でよしとしたのであれば、その法律家はかなり問題」だという。

この点について、光通信は「社内調査委が公表したものなのでコメントを差し控える」とし、東証は「個別案件に関するコメントは控えたい」としているが、この弁護士は「東証はかなりの関心を持っているはず」だと見る。

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